<壁に機器を押し当てると、部屋のなかの人々が画面上に映像化される>
イスラエルの軍用画像処理企業が、壁の向こうを透視する機器「Xaver 1000(クサーヴァ 1000)」を開発した。レーダーとAI画像処理技術により、壁の向こうの物体を3D映像で表示する。
製品は壁の外側に設置したパネルからレーダーを照射し、建物のなかにいる人やモノを点の集まりで表示するしくみだ。鮮明な画像を得られるわけではないが、例えば人の場合は人数と背丈、部屋のどの位置にいるかや、移動パターンなどがわかる。
また、シルエット状の映像から、おおよその体勢を把握することも可能だ。歩き回っているのか、寝ているのか、または武器を構えているのかなどをリアルタイムの映像で確認できる。
レーダーで壁の向こうを探索する技術はこれまでにも存在したが、ごく粗い情報しか得ることができない問題があった。Xaver 1000はレーダーの探索結果を独自のAIと追跡アルゴリズムで処理し、人間のシルエットがおおよそわかるレベルの精密な画像に変換する。
機器はイスラエルの大手画像処理メーカーであり、軍用透視技術のXaverシリーズを主力製品としているCamero-Tech(カメロ・テック)社が開発した。同社はこれまで、建物内の人物までの距離のみを取得できる簡易版のXaver 100などを販売している。今年6月にパリで開催された防衛博覧会「ユーロサトリ 2022」において、上位版となる同1000を発表した。
建物内のようすをスキャンできる同製品は、まるでSF映画のようですらある。軍事ニュースサイトの「ソフリプ」は本製品を取り上げ、「壁の向こうをみるために、今日では複雑な人工知能と画像処理ソフトウェアが使われる。間違いなく、私たちの誰もがSF映画でみたことがある装置が、今では現実のものとなった」と述べている。
製品は1メートル四方に満たない薄い正方形をしており、四方のパネルを展開した状態で壁に押し当てて使用する。レーダーで内部を走査し、人やモノの検出結果をタブレット端末ほどの大きさの画面にリアルタイムで表示するしくみだ。
使用にあたって特別な訓練は必要なく、壁に設置してボタンを押すだけで映像が得られるという。本体サイズは比較的小型となっており、オペレーター1名がいれば素早く設置・運用可能だ。米インサイダー誌によると同社は、「ほとんどの一般的な建材」を透視することができるとしている。
Camero-Tech社は製品の主な販路として、公的機関および軍事機関を想定している。捜査当局であれば、立て篭もりが発生した際、犯人と人質の人数や姿勢などを把握可能だ。また、レスキュー隊が使用すれば、がれきの下から生命反応を探るなど人命救助に活用可能だという。このほか同社は、諜報機関による使用を念頭に置いているとしている。
同社のアミール・ビーリCEOは「Xaver 1000は人質の救出などさまざまな局面において、人命救助活動の成功に向けた最適なアプローチを提供します」と述べ、製品の性能に自信を示している。