コラム

電力逼迫は、太陽光発電のせい?

2022年07月07日(木)20時27分

そうなると、日本は中国にますます大きく差をつけられることになる。日本で太陽光発電や風力発電が数年のうちに大きく伸びる見込みはないからである。なにしろ、酷暑のなか節電を求められるのは太陽光発電のせいだ、とブツクサ言っているぐらいだから。

前ページの表で気づくのは、日本の電源構成に占める風力発電の比率の異様な低さである。他の国ではどこでも風力発電の規模は太陽光発電の2倍ないしそれ以上ある。同じ再生可能エネルギーでも、風力発電の方が低コストだったので、風力発電をより一生懸命導入するのが自然だからである。

日本ではなぜ風力発電がかくも少ないのか、筆者にはその理由がよくわからない。偏西風が吹いているヨーロッパと違って日本には風力発電に適した場所が少ないのだという説もあるが、それにしても異様に少ないのは日本の政策や制度に原因があると思われる。日本では電力会社が電力の安定供給にこだわるため、出力が不安定な風力発電所を電力網に接続するのを嫌がるともいわれる。電力会社の立場はそうだとしても、再生可能エネルギーの利用拡大が国家的な至上命題なのだとすれば、政府は電力会社に風力発電所の接続を拒否させないような制度を作る必要がある。

いずれにせよ、中国など他国の再生可能エネルギーに対する取り組みに比べると、日本は動きが鈍く、果たしてこんな調子で2030年に温室効果ガス排出46%削減なんて実現できるのか不安である。2030年まであと8年しかない。いまから原発の新設を計画してももう間に合わない。工期の短い太陽光発電、風力発電を増やすしかない。

ちなみに、東京で最高気温が35度を上回った6月25日から7月3日までの間、私の家では日中は電力をまったく買わなかった。なぜなら、日中は屋根の上の太陽電池で発電し、エアコンをつけてもなお電気が余った。余った電気は蓄電池に蓄え、太陽電池の出力が落ちてくると、蓄電池の電気を使う。だいたい夜9時から夜中ごろに蓄電池の電気がなくなるので、夜から朝8時ぐらいまでは電力会社から電気を買う必要があるが、その時間にはエアコンをつけないので買う量は少ない。電力逼迫に対して自分も何とかしたいと思う人は、この機会にぜひ家庭用蓄電池の購入をご検討いただきたい。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

次期FRB議長の条件は即座の利下げ支持=トランプ大

ビジネス

食品価格上昇や円安、インフレ期待への影響を注視=日

ビジネス

グーグル、EUが独禁法調査へ AI学習のコンテンツ

ワールド

トランプ氏支持率41%に上昇、共和党員が生活費対応
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story