コラム

東京のシェア自転車は役に立ちますか?

2017年11月17日(金)18時00分

中国の自転車シェアリング会社モバイクの自転車置き場(今年8月、深セン) REUTERS

<東京の自転車シェアリングの使い勝手に関するコラムに多くの反響があったが、筆者の結論は変わらない。自転車シェアリングは日本でも大きな可能性があるが、運営主体が今のままではダメだ>

本年9月に本欄で書いた「自転車シェアリングが中国で成功し、日本で失敗する理由」に対して、ネット上で多くの反響があった。

なかでも東京のシェア自転車、すなわちドコモ・バイクシェアが運営主体となり、東京都心の7つの区(千代田区、中央区、文京区、新宿区、港区、江東区、渋谷区)で実施されている「自転車シェアリング広域実験」の使い勝手の悪さに関する私の体験談の部分に対して賛否両方の意見が多い。

なかには、私の記述は「間違いだらけ」「ウソ」「事実でない」とものすごい剣幕の人もいる。使用感を素直に書いただけでこんなに罵倒されるのだったら、もう東京のシェア自転車には近寄りたくないというのが本音だが、私の認識不足があったことも否めないので、その訂正を兼ねて、批判に答えたい。

第一に、自転車を貸し借りする専用の置き場が少なく、置き場と置き場が1キロ以上離れていたりするため、東京のシェア自転車は役に立たない、と私が書いたことに対して、それはウソだと証明しようとした人がいる。その人によれば、東京の7区に全部で312カ所ある置き場のうち、11カ所(3.5%)は徒歩1キロ圏内に他の置き場がないのだという。つまりこの人は、ありがたいことに私の書いたことが本当だということを証明して下さっているのである。

自転車置き場が不便なので歩く

ただ、置き場の配置は、数百メートルごとに均等に配置すればいいといったものではなくて、多くの人が自転車に乗っていったら便利だなと思うような区間の始まりと終わりに設置するようにすることが重要である。

そうした区間として私が思い浮かべるところの一つが、JR市ヶ谷駅から、地下鉄都営新宿線曙橋駅の近くの中央大学市ヶ谷キャンパスまでの1キロほどの区間だ。地下鉄に乗れば一駅だが、市ヶ谷駅での乗り換えにけっこう時間がかかるので、私は歩いて行くことが多い。

ここにシェア自転車があれば乗っていきたい距離だが、もしドコモのシェア自転車を利用しようとすると、まず市ヶ谷駅から中央大学とは逆方向に500メートル歩いて置き場で自転車を借り、そこから2.3キロ自転車に乗り、置き場に返したら800メートル歩いて戻って中央大学に到着である。これではシェア自転車を利用する気にはならない。東京の置き場配置の問題点は、それが結局どこからどこへ向かう人を想定しているのか、その狙いがまったく見えないことだ。

第二に、中国でモバイクのシェア自転車を借りるのにはスマホを2回タッチするだけでいいので5秒程度で済むが、ドコモの場合にはスマホを20回以上タッチし、1分以上かかる、と書いたことについて、ウソだとおっしゃる方がいる。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、米国に核軍縮の責任果たすよう要求 米国防総省

ワールド

11月スーパー販売額前年同月比2.8%増、9カ月連

ワールド

ベトナム、次期指導部候補を選定 トー・ラム書記長は

ワールド

中国特使、タイとカンボジアに早期停戦求める
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 2
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 3
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    【外国人材戦略】入国者の3分の2に帰国してもらい、…
  • 6
    週に一度のブリッジで腰痛を回避できる...椎間板を蘇…
  • 7
    「信じられない...」何年間もネグレクトされ、「異様…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story