コラム

中国は電気自動車(EV)に舵を切った。日本の戦略は?

2017年11月01日(水)18時30分

ただ、核のゴミという問題に解決の糸口が見えない以上、日本では原子力は現有の原発が寿命を終える2030年代までの過渡的なエネルギーでしかありえないと思う。その後は、再生可能エネルギー中心に移行すべきだが、その時にEVとの相性の悪さという問題が浮上してくる。もし蓄電の技術が進めば、昼間に太陽光発電などで作った電気をEVが充電する夜間に供給することも可能になるが、これまでの蓄電技術の進歩のペースをみると、どうも余り期待できない。むしろ太陽光や風力で発電した電気が余るときは水素を作っておき、それでFCVを動かす、という方が良さそうである。つまり、原発の再稼働が進むことを前提とすれば、今後20年ぐらいはEVが主流、電源構成が原発から再生可能エネルギーにシフトする2030年代後半からはFCVに主流を移すというタイムテーブルが日本には適しているように思われる。

では人々をどのようにガソリン車からEV、PHEV、FCVに誘導したらいいのだろうか。中国では、ガソリン自動車の購入を事実上制限することでEVへ人々を誘導しているが、車離れが加速している日本では同じ手は使えない。だが、これまでのようにEVやFCVの購入に対して補助金を出すというだけでは低迷を脱するのは難しい。

特定地域を指定して、その中はエコカーだけにするというアイディアはどうだろうか。観光客が集まり、道幅が狭いような地域がいい。たとえば鎌倉なんかどうだろう。域内の住民には補助金を支給してエコカーに買い換えてもらう。外からガソリン車に乗って遊びに来る人は、市の入口にある駐車場に自分の車を停め、市内は公共交通か、レンタルのEVで移動する。とにかく、エコカー中心の世界を日本でも実現してみせないことにはエコカーの普及は進みそうにない。

プロフィール

丸川知雄

1964年生まれ。1987年東京大学経済学部経済学科卒業。2001年までアジア経済研究所で研究員。この間、1991~93年には中国社会学院工業経済研究所客員研究員として中国に駐在。2001年東京大学社会科学研究所助教授、2007年から教授。『現代中国経済』『チャイニーズ・ドリーム: 大衆資本主義が世界を変える』『現代中国の産業』など著書多数

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日本の国債管理政策、マーケットとの対話は世界一緊密

ビジネス

午前の日経平均は反落、米ハイテク株安を嫌気 TOP

ワールド

中国、岩崎茂元統合幕僚長に制裁 ビザ制限・資産凍結

ワールド

原油先物は反発、米・ベネズエラ緊張化による供給途絶
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story