コラム

「妊娠するためのサポート」が企業に求められる時代

2016年09月27日(火)16時13分

必ずしも新たな制度を作らなくてもサポートは可能

 一部の企業では、不妊治療のための休暇制度や費用の補助等のサポートを始めている。社員の「妊娠前」のサポートまで企業がする必要が本当にあるのかという声も聞こえてきそうだが、「そこまでやる」という本気が、働く女性達に勇気を与える。

 先日、女性活躍推進を積極的に推進している企業のセミナーにおいて、「企業内託児所が導入された時のインパクトが忘れられない。会社が本気で女性の活躍を考えていることが伝わった」という話がされていた。この話のように、「妊娠前」のサポートは、一部の社員のための制度や仕組みかもしれないが、社員ひとりひとりにより活躍して欲しいという会社からの本気のメッセージとして、社員の心に刻まれ、女性たちの「働く活力」となるだろう。

 女性にとって、働くことや働きながら妊娠・出産・子育てをすることだけが選択肢でないことは言わずもがなだが、少子高齢化社会の日本にとって、働きながら妊娠・出産・子育てをしていく女性が増えることが求められるのであり、今こそ、女性が抱えている「妊娠・出産」への深刻な悩みに企業としてアクションを起こして欲しい。

「妊娠前」のサポートは治療のための休暇や費用サポートだけが唯一のやり方ではない。「在宅勤務の導入」や「有給休暇の時間単位の取得制度」があるだけでも通院はしやすくなる。また、「家族の転勤による休職制度」も妊娠を検討する夫婦にとってはありがたい。必ずしも新たな制度を作らなくても、既存の制度を活用したり、組み合わせることで立派なサポートとして成り立つことも多いはずだ。制度を作らなくてはなどとハードルを上げ過ぎて躊躇するのではなく、まずは、社内の制度を「妊娠前のサポートに活用できそうか」という視点で点検してみることから始めてみてはどうだろうか。

プロフィール

古平陽子

株式会社電通 電通総研 主任研究員

2000年入社。マーケティング・プランニング部門を経て、現在は電通総研にて生活者・トレンド研究に従事。「女性/ママ/家族」「次世代育成」を専門領域とし、インサイト開発からプランニングまでを行う。財務総合政策研究所「女性の活躍に関する研究会―多様性を踏まえた検討―」に委員として参画。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ニデック、延期していた第1四半期決算14日開示へ 

ビジネス

JX金属、今期業績を上方修正 AI需要で半導体材料

ビジネス

出光、26年3月期予想を上方修正 純利益27%減の

ワールド

米韓合意の文書いまだ発表されず、潜水艦問題で難航か
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 2
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    コロンビアに出現した「謎の球体」はUFOか? 地球外…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    インスタントラーメンが脳に悪影響? 米研究が示す「…
  • 7
    ギザのピラミッドにあると言われていた「失われた入…
  • 8
    中年男性と若い女性が「スタバの限定カップ」を取り…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 9
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story