コラム

女性の半数が「夫は外、妻は家庭」と思っているのに、一億総活躍をどう実現するのか

2016年08月30日(火)11時02分

PeopleImages-iStock.

<アベノミクスで「一億総活躍社会」が掲げられ、仕事と家庭の両立支援、女性の管理職育成など「女性の活躍」への期待が高まっている。しかし、当の女性の間では「専業主婦になりたい」という声も多く、働く女性の9割は非管理職志向だ。こんな状況で一体どうやって「女性の活躍」を増やしていくのか>

 アベノミクスの第2ステージとして、「一億総活躍社会」の実現が掲げられ、「女性の活躍」への期待も益々高まっている。女性活躍推進法も制定され、仕事と家庭との両立支援制度の整備、女性の管理職育成等、様々な取り組みが行われている。しかし、女性は、第1子出産で約6割が離職し(出典:男女共同参画白書平成28年版)、有職女性の約9割は非管理職志向である(出典:電通総研「女性×働く」調査, 2014年実施)。また、これだけ女性活躍推進が謳われていても、若年女性にインタビューをしていると、「専業主婦になりたい」という声を実に多く耳にする。

【参考記事】「一億総活躍社会」の目標設定は意外とシリアス

「仕事価値観の育成」は就職する前までが勝負

 女性活躍推進のためには、企業における制度改革は重要である。しかし、女性自身の"働くことへの気持ち"が追いついていない。ここに本質的な課題がある。就職してから女性にキャリア教育を始めるのでは遅く、就職する前段階の「仕事価値観の育成」にもっと力を入れるべきである。

 内閣府の世論調査(注1)で「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方に賛成か反対かを聞いている項目があるが、男性の46.5%、女性の43.2%がこの考え方に「賛成」と答えている(出典:女性の活躍推進に関する世論調査, 2014年実施)。男女の役割意識が根深く、男女共に、"女性が働くこと"を当たり前のこととして受け入れていないことがよく分かる。このような従来ながらの男女の役割意識が打破されない限り、真の意味で女性活躍推進は進まないだろう。

 以前、電通総研は、「働き続けている女性」と「仕事を一旦辞めて、再開している女性」「仕事を辞めたままの女性」において、働くことへの意識や価値観がどのように違うかを分析した(出典:電通総研「女性×働く」調査, 2014年実施)。その結果、「働き続けている女性」は、初就職時時点で既に、長く働くことを想定し、"働くことを当たり前のこと"として捉えていた。そして、社会や人の役に立つという"利他的マインド"と"経済的自立・精神的自立・成長心"が働くモチベーションとなっていた。つまり、「働き続けている女性」にはポジティブな仕事価値観が形成されている。

 結婚や出産後は専業主婦になろうと思い描きながら就職し、その後、働き続けること、キャリアアップすることに目覚める人も当然いる。しかし、人の根本的な価値観や理想とするライフコースは、なかなか変わらないものだ。女性活躍を本気で考えるならば、就職する前までが勝負である。女性自身に「結婚や出産を経ても働くという選択も魅力的な選択肢だ」「働くことを通じて、ステップアップしていくことは魅力的なことである」というポジティブな仕事価値観をしっかり根付かせておくことが必要となる。

プロフィール

古平陽子

株式会社電通 電通総研 主任研究員

2000年入社。マーケティング・プランニング部門を経て、現在は電通総研にて生活者・トレンド研究に従事。「女性/ママ/家族」「次世代育成」を専門領域とし、インサイト開発からプランニングまでを行う。財務総合政策研究所「女性の活躍に関する研究会―多様性を踏まえた検討―」に委員として参画。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ホルムズ海峡、世界のコンテナ船の約1割が滞留=ON

ワールド

ガザで燃料・食料が枯渇寸前、イスラエルによる検問所

ワールド

イラン紛争、レバノンに拡大 クウェートが米軍機を誤

ワールド

イラン作戦、「終わりのない戦争」ではない=米国防長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医師が語る心優先の健康法
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    ドバイの空港・ホテルに被害 イランが湾岸諸国に報…
  • 7
    人気の女性インフルエンサー、「直視できない」すご…
  • 8
    【台湾侵攻は実質不可能に】中国軍粛清で習近平体制…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    【トランプ関税はまだ序章】新関税で得する国・損す…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 3
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 4
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 7
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 8
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石…
  • 9
    「若い連中は私を知らない」...大ヒット映画音楽の作…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story