コラム

反移民感情と民主主義のバランスが崩壊したフランスの教訓...人口移動は今後「さらに加速する」

2024年07月02日(火)17時37分

「西側指導者は道徳的な指針を失い、難民の権利、人道主義に関する自らの長年の道徳的立場を損なっている。その結果、便宜的なご都合主義に走り、手っ取り早い解決策を追い求めるようになった。難民が不都合だからと言って出身国に送り返すのはおかしなことだ」

アル=グウェル氏によると、モノであれ、サービスであれ、お金であれ、労働力であれ、資源は世界中を自由に移動する。それが人類の歴史だ。「私たちはお金が自由に動くことを望んでいるが、労働力が自由に移動することは望んでいない」。しかし自然の摂理は止められない。

難民問題を武器化するロシアのプーチン大統領

「米国やフランスが難民をアフリカに送り返し始めれば始めるほど、自らの不道徳さや、アフリカに対して人種差別的な政策をとっていることを露呈することになる。人口移動は気候変動によって世界的に悪化する」(アル=グウェル上級研究員)

気候変動によって世界のいくつかの地域が住めなくなり、人々は移動せざるを得なくなる。水の安全保障、食糧の安全保障の問題も今後20年でますます増えていくだろう。ウラジーミル・プーチン露大統領は西側諸国を不安定化させるため、すでに難民・移民問題を武器化している。

「世界は非常に深刻な形でそれに対処しなければならない。米国、欧州、日本、世界中の国々がアフリカに投資してチャンスを与え、国を安定させるために政治的にも投資しなければならない。アフリカが不安定で経済的に困窮している限り難民は増え続ける」

果たしてアル=グウェル氏の警鐘は欧州や米国の有権者に届くのか。

ニューズウィーク日本版 トランプの大誤算
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月14号(4月7日発売)は「トランプの大誤算」特集。国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、体制変更後のイランと制裁緩和協議へ 武

ビジネス

米利下げ観測が再燃、原油価格下落受け 不確実性の見

ワールド

米、外交失敗ならイラン戦闘再開の用意 国防長官「決

ワールド

北朝鮮、6─8日に戦術弾道ミサイルの弾頭実験など実
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 2
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライナ軍司令官 ロシア軍「⁠春の​攻勢」は継続
  • 3
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命防衛隊と消耗戦に
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 6
    キッチンスポンジ使用の思いがけない環境負荷...マイ…
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 9
    アメリカとイランが2週間の停戦で合意...ホルムズ海…
  • 10
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 3
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 4
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 5
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 8
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 9
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 10
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story