コラム

ガソリン車の販売はすでに下り坂...政府や企業の意欲は停滞するも、EV市場の成長は失速していなかった

2023年12月12日(火)17時47分

EV用バッテリーのコバルト需要の増大が環境破壊や人権侵害を引き起こさないよう、より厳格な規制と倫理的な調達慣行が必要だ。ガテテ氏は「政策立案者は現地調達政策、インセンティブ、バッテリーやEVのための重要なインフラ整備と経済特区の設立を加速させなければならない」と力を込めた。

AFCのサマイラ・ズバイルCEO(最高経営責任者)は「アフリカにはエネルギー転換に必要な鉱物や金属が世界全体の40%以上あり、持続可能な鉱物採掘のためにどのように協力できるかに焦点を当てるべきだ」と語る。バッテリーの前駆体が3億ドル以上の価値を生むという研究結果もある。

ゼロエミッション車移行ロードマップ

COP28に合わせ、ゼロエミッション車(ZEV)移行協議会の国際支援タスクフォースは30年までにすべての地域でZEVを最も安価で入手しやすい魅力的な選択肢とする「グローバル・ゼロエミッション車移行ロードマップ」を発表した。現在、世界の自動車市場は多層化し、多くの国がZEV化の流れから取り残されているのが現実だ。

道路交通からの温室効果ガス排出量は他のセクターよりも急速に増えており、全体の10%以上を占める。石炭火力発電に次ぐ第2の排出源だ。エネルギーセクターとの連携を強化しなければ排出ゼロへの移行を達成するのは困難だ。しかし、その一方で移行を加速させることができれば途上国には幅広い利益がもたらされるという。

ロードマップ通りに行けば、途上国はテールパイプから排出される粒子状物質と窒素酸化物を70%近く削減して大気の質を改善できる。二酸化炭素排出量も60%以上削減して、53億バレル以上の石油消費を節約できる。これは20年時点における新興国の石油総消費量の4分の1以上に相当する。ロードマップは次の5つの政策に重点を置く。

・政策行動を策定・実施するための新興・途上国全体の能力構築
・資金へのアクセス改善と拡大
・新興・途上国における ZEVへの利用可能性の向上
・充電インフラ展開の加速
・ZEV、EV、バッテリー部品のライフサイクルの管理

政策はスローダウンも、EV市場の成長は続く

COP28の「輸送の日」の6日、英国のマーク・ハーパー運輸相は「リシ・スナク政権はドライバーの味方であり、民間セクターと協力して充電ポイントインフラを提供し、より多くの急速充電ポイントへ道を開く。7000万ポンドの試験的スキームはその出発点で英国の交通の未来を発展させるために賢明かつ迅速に投資する」と発表した。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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