コラム

どこまで落ちる日本...COP28で不名誉な「化石賞」2回、気候変動対策は世界58位に沈む現状

2023年12月09日(土)17時40分

日本がランクを落としていることについて、ブルク氏は筆者の質問に「日本の評価が低いのはすべてのセクターで非常に低い目標を設定していることや、1人当たり排出量に大きく関係している。温室効果ガスや再エネ、エネルギー消費に関して良い目標が設定されていない。ただ、新しい再エネ発電の建設を始めているのは良いトレンドだ」と答えた。

世界の統計サイト「ワールドメーター」によると、日本の1人当たり二酸化炭素排出量は9.76トンで世界26位。ブルク氏は「日本が石炭や他のエネルギー源に対して自然エネルギーを増強する傾向を続けるならランキングが上昇するチャンスはある。しかし過去に比べてはるかに速いスピードでなければならない」と警鐘を鳴らす。

日本の「取り残され感」はCOP28でもはや決定的となった。

経済を犠牲にしてまで対策を進める気はない中国

中国を抜いて世界で最も人口の多い国になったインド(14億人)は7位にランクされた。評価が高い理由は1人当たりの排出量やエネルギー消費量が少ないことだ。自然エネルギーを積極的に拡大しているが、石炭への依存度は依然として高い。インドは再エネの割合を増やし、化石燃料への依存を減らす必要があるが、30年の再エネ目標は低すぎる。

インドは相対的な排出量目標を設定し、他国よりも自然エネルギーの開発を進めている。非常に低い水準にある排出量は増加しているとはいえ、奇跡的な高度成長を遂げた中国ほど高い軌跡をたどっていない。自然エネルギーの拡大により排出量を減らすことができなければインドは目標を達成できないという。

世界最大の石炭生産国である中国の1人当たり排出量はこの20年間で大幅に増加し、現在では世界の平均を上回っている。再エネを強力に成長させ、エネルギー効率を向上させるが、30年までにガス生産量を増やす予定だ。不動産バブル崩壊でバランスシート不況に陥る中、化石燃料を使って経済のアクセルを踏まざるを得ないのが現状だ。

中国に次いで世界第2の排出国、米国の専門家は気候変動に関連したインフレ抑制法が再エネへの大規模な投資につながったことを歓迎している。しかしあらゆる分野でより具体的な政策の実施が求められている。パリ協定から離脱したドナルド・トランプ前米大統領が来年の大統領選で返り咲いた場合、状況をさらに悪化させる恐れがある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

三菱自、30年度に日本販売1.5倍増へ 国内市場の

ワールド

石油需要、アジアで伸び続く=ロシア石油大手トップ

ワールド

イタリアが包括的AI規制法承認、違法行為の罰則や子

ワールド

ソフトバンクG、格上げしたムーディーズに「公表の即
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story