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プーチンは本気で「歓迎」されると思っていた...幻想を打ち砕かれ、本格攻撃へ
ウクライナのセルギー・キスリツァ国連大使は国連総会で、一人のロシアの若い兵士のメッセージを読み上げた。兵士は「まだ演習に出かけているの」と尋ねる母親に「今、私が望む唯一のことは自殺することだ。ママ、僕はウクライナにいる。これは本当の戦争なんだ。怖い、みんなに発砲している。民間人にも」と答えた。
コフマン氏によると、ウクライナ軍に待ち伏せされたロシア軍の将校は自分の部下を見捨てて逃げ出している。兵士は装備を捨て、森の中に逃げ込む。破壊された車両より放棄された車両の方が圧倒的に多く、そのまま放置されている。「嘘をついて戦場に連れてこられた部隊の士気が低いのは当たり前だ」という。
ロシアの法律では徴兵制の兵士(18~27歳の男性全員、1年間)を前線に送り出すことは禁じられている。このためウラジーミル・プーチン露大統領は3月8日、国際女性デーを記念してTV放映されたメッセージで「徴兵制の兵士は敵対行為に参加しておらず、今後も参加しない。予備役の追加招集もない」と強調した。
プーチン氏の願望に基づいて立てられた作戦
戦争では戦果を過大に、損害を過少に発表する傾向が強いため注意が必要だが、ウクライナ軍参謀本部が毎日、ロシア軍の損害をフェイスブックで更新している。それによると、2月24日から3月7日にかけロシア軍は兵士1万1千人以上と戦車290両、戦闘装甲車999台、大砲117門を失い、航空機46機、ヘリ68機、無人航空機7機を撃墜されたという。
ロシア軍は上級の将軍が命令を出さないと動かない。そのため前線に出た副司令官級の少将らが次々と命を落としている。初期の作戦で航空戦力が動員されなかったのは、主要都市を攻撃してウクライナ国民の反発を招かないためだった。北大西洋条約機構(NATO)を牽制するため航空戦力や精密誘導弾(PGM)を温存しているとの見方もある。
そもそも作戦が軍事戦略ではなく、政治的な思い込みに基づいて立てられたことに問題がある。「ウクライナは国家ですらない。ロシア軍がキエフに入れば、ナチズムの圧政に苦しむ市民は歓声で迎え入れる。ゼレンスキー政権はすぐ崩壊する」というプーチン氏の願望を前提に作戦は立てられた。
側近中の側近であるセルゲイ・ショイグ露国防相はプーチン氏への忠誠を示すため、荒唐無稽な作戦に同意したとみられる。しかしウクライナ侵攻作戦が最終的に失敗に終わればプーチン氏はスケープゴートを探す必要性に迫られる。ショイグ氏が「戦犯」として真っ先に処分される可能性はかなり高いだろう。