コラム

南ア変異株「オミクロン」欧州でも続々発見 「2回接種でも感染か」と英首相

2021年11月28日(日)13時32分

ドイツのバイエルン州保健省はオミクロン株の感染例2人を確認。2人は24日にミュンヘン空港から入国した。イタリア国立衛生研究所はミラノで、モザンビークからの渡航者からオミクロン株を検出したと発表した。チェコ保健当局も、ナミビアに滞在していた人の中に感染の疑いがある人がいるため調査を行っている。

オランダ保健当局は、26日に南アフリカのヨハネスブルグとケープタウンからの2つの便でアムステルダムのスキポール空港に到着した乗客約600人のうち61人から陽性反応が出て、オミクロン株の感染者が含まれている可能性があるという。このほか、すでにボツワナ、ベルギー、香港でも感染例が確認されている。

「私たちの家はデルタ株ですでに燃えている」

英インペリアル・カレッジ・ロンドンのピーター・オープンショー教授(実験医学)は「情報が非常に速いのは驚異的だ。渡航制限は感染速度を遅らせ、重症化や免疫回避、治療、予防に関する重要な事実を確立するため時間を稼げる。南アでは感染者数が3日で3倍の2828人になった。感染率がデルタ株の2倍ということも考えられる」と解説する。

「スキポール空港に600人が到着し、そのうち60人に陽性反応が出たという報告は注目に値する。感染率が10%であることを示唆している。入院患者がいないという報道もあり、確認されれば非常に心強い。オミクロン株の出現がなくても、デルタ株で欧州の多くの地域は危機的な状況にあり、私たちはすでに燃えている家にいることを忘れるべきではない」

オープンショー教授が指摘するように、イギリスでは1日当たりの新規感染者数は4万人近く、新規入院患者は768人、死者も131人にのぼっている。欧州連合(EU)にアイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタインを加えた欧州経済領域(EEA)30カ国の1日当たりの新規感染者数は約24万6千人、死者は1637人を数えている。

英ウォーリック大学医学部のローレンス・ヤング教授(ウイルス学、分子腫瘍学)は「南アへの渡航に関連した2件の感染例がイギリスで確認されたことは検査・追跡システムが機能していることを示している。現在、デルタ株の感染者は毎日非常に多く、南アフリカでのオミクロン株の感染者数よりはるかに多い」と語る。

「既存のワクチンがオミクロン株感染による重症化を防ぐ可能性は、これまでに確認された変異株と同様、高いと思われる。ブースターを含むワクチンの接種率を上げる、マスク着用をより広く奨励する、風通しの悪い場所での大規模な集まりを制限することは医療に負担をかけずに国民を守り、昨年より楽しいクリスマスを迎えるための重要なアプローチだ」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ポーランド、米と約20億ドル相当の防空協定を締結へ

ワールド

トランプ・メディア、「NYSEテキサス」上場を計画

ビジネス

独CPI、3月速報は+2.3% 伸び鈍化で追加利下

ワールド

ロシア、米との協力継続 週内の首脳電話会談の予定な
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    「関税ショック」で米経済にスタグフレーションの兆…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story