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ブレークスルー感染はこうして防げ 英オックスフォード大学がツール開発
感染予防を訴えるサイン(昨年冬にモスクワで催されたエクストリームスポーツフェスティバルで)Shamil Zhumatov-REUTERS
<ワクチン2回接種で死亡、入院は劇的に減少。ダウン症や腎移植患者などハイリスクグループには優先的に追加治療を>
[ロンドン発]英オックスフォード大学など12組織18人の研究チームが新型コロナウイルスワクチンを接種した690万人以上の大人(うち520万人は2回接種済み)を調べたところ、ダウン症や認知症など慢性疾患を持つ人はワクチン接種後もコロナに感染しやすく、死亡率も高いことが分かった。英医師会雑誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルで発表された。
正確には昨年12月8日から今年6月15日にかけイギリスでワクチン接種を受けた19~100歳の695万2440人(2回接種済みは515万310人)が対象で、死亡は2031例、入院は1929例だった。しかし2回接種から2週間以上後に死亡していたのは81人、入院も71人にとどまり、ワクチン2回接種で死亡、入院は劇的に減ることを改めて裏付けた。
研究チームはこうしたデータをもとに年齢、性別、民族、貧困度、慢性疾患ごとにブレークスルー感染による死亡、入院リスクを算定した。相対的な危険度を示すハザード比で見た死亡率は男性1.89倍、白人を1倍とした場合、インド系1.59倍、パキスタン系2.28倍となり、貧困地域では1.27倍となっていた。高齢になるほど死亡率は上昇していた。
優先的に追加接種や抗体カクテル療法を
ダウン症12.7倍、腎移植8.1倍、鎌状赤血球症7.7倍、ケアホーム入所者4.1倍、化学療法4.3倍、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)・AIDS(後天性免疫不全症候群)3. 3倍、肝硬変3倍、まれな神経系疾患2.6倍、最近、骨髄移植・固形臓器移植を受けた患者2.5倍、認知症、パーキンソン病各2.2倍となった。
このほか慢性腎臓病、血液がん、てんかん、慢性閉塞性肺疾患、冠動脈疾患、脳卒中、心房細動、心不全、血栓塞栓症、末梢血管疾患、2型糖尿病などが1.2倍から2.0倍の範囲でリスクを高めていた。入院のハザード比でもダウン症2.6倍、腎移植12.8倍、ケアホーム入所者1.7倍と同じような増加傾向が見られた。
白人と比較してインド、パキスタン系のリスクが高くなっていたのはコロナ感染に対する感受性の違いというよりも、普段の行動やライフスタイル、世帯規模、職業に関係しているとみられる。これに対してダウン症患者は、感受性の増加と遺伝的素因を反映している可能性があるという。
慢性疾患を抱えるこうしたハイリスクグループはワクチンを2回接種してもブレークスルー感染して入院、死亡する恐れがあるため、優先してワクチンの3回目(ブースター)接種や抗体カクテル療法を行う必要がある。3回目接種の優先順位や投与量、抗体カクテル療法に関する政策立案に役立てることができる。