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EUの政治は9月のドイツ総選挙次第、対中・対ロで英米と一線を画す
4月下旬、ドイツのメルケル首相は中国の李克強首相と6回目の政府間協議を開いた Michele Tantussi-Pool-REUTERS
<27カ国の欧州連合は離脱した英国に不満たらたら。外交・安全保障や人権問題でも英米と足並みをそろえる気はないが、それには明確な理由がある>
英国が国民投票でEUからの離脱を選択してから、6月23日で丸5年になる。
欧州議会が今年4月、離脱後の貿易ルールを定める英EU通商協力(無関税)協定について最終的に承認したものの、いまだに宿題として残る北アイルランド(EU圏のアイルランドと地続きで事実上「国境」がないため、管理が困難)の通商や金融市場へのアクセスをめぐる溝は、埋まるどころか、逆に広がっているように感じられる。
コロナ危機で世界に先駆けワクチンの集団接種に成功した英国に対して、27カ国から成る大所帯のEUは完全に出遅れた。しかも英製薬大手アストラゼネカのワクチン供給が滞ったため、フラストレーションを英国にぶちまけた。
反EUの極右勢力が国内で台頭するフランスやドイツにとり、英国がEU離脱によって成功するのはあってはならないシナリオだ。
離脱後の通商協力協定には紛争解決の手段が書かれている。しかし実際の運用がどうなるのか、これから英EU間の溝が広がるのか縮まるのかは全く見通せない。
はっきりしているのは、離脱によって英EU関係がよくなることはあり得ないという現実だけだ。
しかしコロナ危機で当面の間、英EU双方の最優先課題は国内経済の復興になる。そのためには双方の通商関係を損なうわけにはいかないはずだ。
外交・安全保障では、6月のG7首脳会議のホスト役を務めた英国が米国と「新大西洋憲章」で合意し、80年前に構築された英米の「特別な関係」を強調した。
一方、EUの大黒柱であるアンゲラ・メルケル独首相は、英EU離脱やドナルド・トランプ前米大統領の「米国第一主義」に巻き込まれないよう、欧州は独自の道を進むと宣言してきた。
今年9月のドイツ総選挙でメルケル首相は政界の表舞台から退く意向だが、EUの政治は2009年からの欧州債務危機を機にドイツを軸に回転するようになった。だから新しい政権がドイツに誕生するまで欧州は動かない。
ドイツは自動車の現地生産・販売で中国に生命線を握られ、石油・ガスの資源や製品の輸出をロシアに依存している。表向き英米と足並みをそろえて中国やロシアへの懸念や憂慮を表明しても、対中、対ロ関係を有利に運ぶための手段でしかない。
中国との間では、香港の民主主義や新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧に対する国際社会の批判が高まる最中に、メルケルはオンライン形式で6回目の政府間協議を開いた。