コラム

英は2024年に石炭火力発電を全廃 石炭依存の日本は海外にプラント輸出も

2021年06月30日(水)18時23分

電気事業連合会の「主要国の電源別発電電力量の構成比」(18年時点)によると、G7の石炭依存度は、「脱原発」を宣言しているドイツが最も高く37.2%、次いで日本の32%、アメリカ28.6%、イタリア10.7%と続く。水力発電が豊富なカナダは7.7%。原発大国のフランスは「脱石炭」が進んでおり、1.8%となっている。

kimura20210630160601.jpg

アンゲラ・メルケル独首相は30年までに温室効果ガス排出量を1990年比で65%、2040年までに同85~90%削減、45年までに「排出ゼロ」実現を目指す。メルケル首相は福島原発事故で22年に「脱原発」を実現すると約束しているため、「脱石炭」を促進できないという事情がある。このため「38年脱石炭」目標の前倒しを頑なに拒否している。

クリーンなイメージが強いドイツだが、実は欧州連合(EU)加盟国の中ではチェコ、ポーランドと肩を並べる「石炭火力発電大国」。一方、ベルギーやオーストリアはすでに「脱石炭」を達成している。

日本は中国、韓国に次ぐ石炭火力発電の輸出国

国際的な環境団体「エンドコール(脱石炭)」の石炭公的海外支援トラッカーによると、最大の海外支援国は中国で5万6135メガワット、第2位が韓国で8430メガワット、第3位が日本で4600メガワット。ドイツの3200メガワット、チェコ、ロシアの各1200メガワットと続く。

日本の菅義偉首相は昨年10月「50年排出ゼロ」を宣言。30年度目標では「13年度比で温室効果ガス排出量の26%削減」を掲げていたが、ジョー・バイデン米大統領主催の気候変動サミットで「30年度までに13年度比で46%削減する」という目標をぶち上げた。さらに50%削減の高みに挑戦する。先進国並みの目標にも現場からは「非現実的」と悲鳴が上がる。

環境団体「気候ネットワーク」の国際ディレクター平田仁子氏は「日本はG7の中で唯一、いまだに国内で石炭火力発電所を建設し、国外の石炭火力に資金提供している国だ」と言う。

G7の首脳コミュニケを受け、気候ネットワークは「日本政府が対応すべきことは、国際協力機構(JICA)がこれから本格支援をしようとしているバングラディシュのマタバリ2石炭火力発電所とインドネシアのインドラマユ石炭火力発電所の2つの政府開発援助(ODA)案件をやめることであり、速やかにその決定をすべきだ」と求めた。

脱石炭連盟は「G7のコミットメントには日本が含まれている。韓国からも同じような約束があった」と強調する。それでも日本政府は「わが国の石炭火力発電は燃料使用量が少なく、温室効果ガス排出量も削減できる」として「"排出削減対策が講じられていない"中国の石炭火力発電と違ってクリーン」と言い続けるつもりなのだろうか。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

12月住宅着工戸数は前年比マイナス2.5%、8カ月

ビジネス

みずほ証の10ー12月期、純利益は4.4倍 債券や

ビジネス

アングル:中銀デジタル通貨、トランプ氏禁止令で中国

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊製鋼を完全子会社に 1株2750
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story