コラム

ドナルド・トランプの『米大統領版アプレンティス』生き残るのは誰だ!

2018年06月13日(水)20時00分

『米大統領版アプレンティス』で生き残るルールは単純明快だ。米国製品を買って貿易赤字の解消に協力しなければ、鉄鋼・アルミ輸入制限のような関税措置を発動する。同盟国は応分の国防費(NATO目標はGDPの2%)を負担して、その予算で米国製兵器を購入せよ――ということだ。

マクロン大統領がことごとく意見の異なるトランプ大統領と「ブロマンス(brotherとromanceの混成語、男同士の愛に近い関係を指す)」を構築できたのは、単にフランスの対米貿易黒字が少なく、国防費支出がGDPの2%を超えているからだ。

安倍首相の場合、トランプ大統領の当選が決まってから真っ先にお祝いに駆けつけ、気心が知れるゴルフ外交を展開している。

対米貿易黒字の解消のため、ステルス戦闘機F35、新型輸送機オスプレイ、無人機グローバルホークといった高額の米国製装備の調達を次々と進める。自民党の安全保障調査会はこれまで政府が目安としてきた「GDPの1%」枠を見直し、NATO目標の2%を参考とするよう求めた。

気の毒だった文在寅

一番可愛そうなのは米朝首脳会談をお膳立てした結果、トランプ大統領に「米韓軍事演習の中止」だけではなく、最終的には「在韓米軍の撤収」にまで言及された韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領だろう。

太陽政策を推進する文大統領は「地球上に残る最後の冷戦を解く世界的な記録となる」と会談を評価してみせたが、内心は決して穏やかではなかろう。「在韓米軍の撤収」こそ、北朝鮮の長期的な戦略目標で、アジアから米軍を排除するという中国の地政学上の利益とも完全に一致する。

『米大統領版アプレンティス』で最後まで生き残る確率が今のところ一番高いのは安倍首相だが、それが日本国民にとって幸せかどうかははっきりしない。確かなのは米中逆転と米国のアジアからの撤退が間違いなく早まっているということだ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story