コラム

中国政府が「企業への介入」を強化...実は、日本や米国でも同じ動きが起きていた 国家の目的は何か?

2023年07月05日(水)18時18分
中国国旗とアリババのロゴ

ALY SONGーREUTERS

<中国政府はアリババを始め有力企業を支配下に置こうとする動きを見せるが、西側諸国でもこうした傾向は強まりつつある>

中国政府が企業への統制を強めている。中国共産党との確執が取り沙汰されていたIT大手アリババグループは、創業者である馬雲(ジャック・マー)氏が同社の経営権を放棄するとともに、6社への分割を余儀なくされた。

ほぼ同じタイミングで中国政府は、企業の取締役会や株主総会の議決を拒否できる特別な権利を持った株式(いわゆる黄金株)の取得を進めていると報道されており、有力企業を実質的に支配下に置こうと画策している。

異例の3期目に入った習近平(シー・チンピン)政権は、共同富裕という概念を提唱しており、企業が生み出した富を人民に再配分する政策を強化している。企業に対する締め付けによって中国の成長率は鈍化が予想されているが、政権は低成長になっても富の再配分と権力基盤強化を優先する方針である。

中国はもともと社会主義国なので、国家が企業を統制下においても不思議ではないが、政府が企業の経営に介入する政策は、フランスなど西側の国にも見られ、近年ではアメリカや日本もそうした傾向を強めている。

フランスは主要先進国の中では最も社会主義的な政策を実施していることで知られており、ミッテラン政権が進めた強力な国有化政策により、多くの上場企業が政府の支配下に入った。その後、再度の民営化が進められた企業もあるが、その際には政府が黄金株を保有することで、実質的な支配権を継続している。

フランスでは、ENA(旧・国立行政学院)に代表されるグランゼコール(官僚養成機関)の出身者が企業トップに就任するケースが多く、企業統治は基本的に国家主導で行われる。こうした手法の是非はともかく、官によって選抜された企業トップは、政府の基本政策である所得の再配分を重視するため、日本のように企業が徹底的に従業員の賃金を抑制したり、下請けなどの取引先を圧迫するという事態は発生しにくい。

日本やアメリカも国家による介入を強化

アメリカでも、近年は中国と政治的に対立していることから、安全保障上の目的で企業活動への国家介入を強めるケースが目立っている。

アメリカ政府は2022年10月、中国に対する強力な半導体輸出規制を発動した。特定分野において中国への輸出を規制するだけでなく、中国で働くアメリカ人も審査対象に加えたため、中国からは多数のアメリカ人ビジネスパーソンが帰国した。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

最近の急速なウォン安・円安、深刻な懸念共有=日韓対

ワールド

米戦略石油備蓄の第1弾、来週末までに供給 8600

ビジネス

日立とGEベルノバ、東南アジアで小型モジュール炉導

ワールド

米商務省、AI半導体輸出の新規則案を撤回 公表から
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革命をもたらす「新世代ドローン」とは?
  • 3
    イラン攻撃のさなか、トランプが行った「執務室の祈祷」を中国がミーム化...パロディ動画が拡散中
  • 4
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 5
    ファラオが眠る王家の谷に残されていた「インド系言…
  • 6
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 7
    ホルムズ封鎖で中国動く、イランと直接協議へ
  • 8
    機内で「人生最悪」の経験をした女性客...後ろの客の…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 8
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 9
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story