中国政府が「企業への介入」を強化...実は、日本や米国でも同じ動きが起きていた 国家の目的は何か?
ALY SONGーREUTERS
<中国政府はアリババを始め有力企業を支配下に置こうとする動きを見せるが、西側諸国でもこうした傾向は強まりつつある>
中国政府が企業への統制を強めている。中国共産党との確執が取り沙汰されていたIT大手アリババグループは、創業者である馬雲(ジャック・マー)氏が同社の経営権を放棄するとともに、6社への分割を余儀なくされた。
ほぼ同じタイミングで中国政府は、企業の取締役会や株主総会の議決を拒否できる特別な権利を持った株式(いわゆる黄金株)の取得を進めていると報道されており、有力企業を実質的に支配下に置こうと画策している。
異例の3期目に入った習近平(シー・チンピン)政権は、共同富裕という概念を提唱しており、企業が生み出した富を人民に再配分する政策を強化している。企業に対する締め付けによって中国の成長率は鈍化が予想されているが、政権は低成長になっても富の再配分と権力基盤強化を優先する方針である。
中国はもともと社会主義国なので、国家が企業を統制下においても不思議ではないが、政府が企業の経営に介入する政策は、フランスなど西側の国にも見られ、近年ではアメリカや日本もそうした傾向を強めている。
フランスは主要先進国の中では最も社会主義的な政策を実施していることで知られており、ミッテラン政権が進めた強力な国有化政策により、多くの上場企業が政府の支配下に入った。その後、再度の民営化が進められた企業もあるが、その際には政府が黄金株を保有することで、実質的な支配権を継続している。
フランスでは、ENA(旧・国立行政学院)に代表されるグランゼコール(官僚養成機関)の出身者が企業トップに就任するケースが多く、企業統治は基本的に国家主導で行われる。こうした手法の是非はともかく、官によって選抜された企業トップは、政府の基本政策である所得の再配分を重視するため、日本のように企業が徹底的に従業員の賃金を抑制したり、下請けなどの取引先を圧迫するという事態は発生しにくい。
日本やアメリカも国家による介入を強化
アメリカでも、近年は中国と政治的に対立していることから、安全保障上の目的で企業活動への国家介入を強めるケースが目立っている。
アメリカ政府は2022年10月、中国に対する強力な半導体輸出規制を発動した。特定分野において中国への輸出を規制するだけでなく、中国で働くアメリカ人も審査対象に加えたため、中国からは多数のアメリカ人ビジネスパーソンが帰国した。
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