コラム

脱炭素、実は「技術」で出遅れている日本に逆転策はあるか

2020年12月23日(水)18時03分

IMACOCONUT/ISTOCK

<菅政権は排出量実質ゼロを打ち出すが、省エネ国家でも技術先進国でもない現実を受け入れる必要がある>

菅政権が本格的な脱炭素政策に舵を切った。安倍政権は事実上、脱炭素を放棄していたことを考えると、極めて大きな方向転換といってよい。

中国を含む世界各国が脱炭素に邁進している状況を考えれば、これは正しい選択だろう。ここ5年で諸外国の環境技術は驚異的な進歩を遂げたが、この大事な時期に脱炭素に背を向けてきたツケは大きい。日本企業は関連技術で諸外国に大きく出遅れており、追い付くのは容易ではない。

菅義偉首相は就任後の所信表明演説において、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると表明した。日本は17年時点で、年間約12億9000万トンの温室効果ガスを排出している。1人当たり排出量は約10.2トンだが、これはイギリス(7.2トン)やフランス(7.3トン)など諸外国と比較してかなり多い。

日本人は自国のことを省エネ国家だと思っているかもしれないが、現実はそうではないのだ。アメリカは別格で年間約20トンも排出する浪費国家であり、日本はアメリカに比べればマシかもしれないが、少なくとも省エネ国家の部類には入らない。

日本の温室効果ガス排出量が多い理由は、社会全体で低炭素化が進んでいないことや、大量の二酸化炭素を出す石炭火力にこだわり続けたことである。エネルギー部門において温室効果ガスの排出量が大幅に増えている主要国は日本だけであり、政府は各国から批判を受け、ようやく石炭火力の削減に着手した。

だが排出量ゼロの目標を達成するには到底不十分であり、今後、日本は急ピッチで再生可能エネルギー発電所を大量建設しなければならない。

■原発で問題が解決しない理由

一部からは原発を再稼働させれば問題が解決するという意見も出ているが、そう簡単にはいかないだろう。日本の原発の安全性や事故後の国民感情の問題は取りあえず棚上げするにしても、現実問題として原発が温暖化ガス削減の切り札にはならないからだ。

フランスは電力の約7割を原発で賄っており、エネルギー部門における温暖化ガスの排出量は他国より少ない。しかし排出量全体で見ると、他部門の影響が大きいことから、原発の比率が低い国と大差はないのが実状だ。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

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