分かっているようで分かっていない 企業の内部留保問題を整理する
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<問題は日本企業が多額の現金を保有したままの状態にしていることであり、結局のところ解決策はコーポレートガバナンスの強化だ>
先の総選挙において、希望の党が内部留保に対する課税策を打ち出したことから、再び企業の内部留保に注目が集まっている。希望の党は政治的なミスで失速してしまったが、日本企業が抱える巨額の内部留保に対する批判は以前から存在しており、財源あるいは経済政策への活用について模索されてきた。一方、内部留保については様々な誤解もあり、議論は定まっていない。
疑問その1 内部留保って現金なの?
そもそも企業の内部留保とはどのような存在なのだろうか。語感から、企業が溜め込んだ利益とイメージされることが多いが、その解釈で大きくは間違っていない。だが「内部留保」イコール「溜め込んだ現金」と考えてしまうと、様々な誤解が生じることになる。
内部留保の厳密な定義は存在しないが、一般的には企業の貸借対照表(バランスシート)における利益剰余金を指していることが多い。重要なのは、これは会計上の概念であって、その金額の現金が存在しているわけではないという点である。
企業が各年度に上げた利益は、バランスシート上では利益剰余金という形でその額が累積されてくる。企業の財務分析を行う際には、この部分を見ることで、その企業が過去にどれだけの利益を上げてきたのかが分かる。だが企業は利益として計上した金額を現金のまま保有しておくわけではない。
製造業であれば生産ラインを建設したり、小売店であれば店舗の設備を更新するなど、企業は何らかの投資を行って事業を継続することになる。現金の多くは資産に変わっているので、現金と内部留保の額は一致しない。
では実際に数字を見てみよう。2016年3月末におけるトヨタ自動車の利益剰余金は約16兆7500億円だった。だがトヨタが保有している現預金(有価証券含む)は約5兆5000億円と内部留保の3分の1程度である。では、日本全体ではどうなっているだろうか。同じく2016年3月末時点におけるすべての日本企業(金融保険業を除く)の内部留保は約406兆円である。しかし現預金は約半分の211兆円しかなく、残りは設備投資などの資産に代わっている(トヨタはあまり現金を余らせていないので、資金を有効活用できている)。
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