コラム

セブン初のレイアウト刷新で株価15%上昇も? 狙うは「お惣菜」拡充

2017年08月01日(火)14時01分

セブンの最終的な目的は、ファストフード類の販売拡大だろう。コンビニの商品は種類ごとに利益率が大きく異なっているが、単価が高く、かつ利益率も高いのは、弁当や総菜などファストフード類である。おでんなど店内での加工が増えるほど利益率が高くなってくるので、販売数量が大きくなるとさらに収益に貢献する。

一方、飲料や菓子などの加工食品は、本部がいくらで仕入れたのかによって利益率が一意的に決まってしまうことに加え、単価はそれほど高くない。販売数量が見込めればという条件付きだが、ファストフードの比率を上げると、店舗の業績は拡大する可能性が高いのだ。

入り口を入ると冷凍食品があり、これを見た顧客は今夜の食事のメニューを考えることになる。奥に進めば、拡張されたカウンターにおでんなどが並んでおり、総菜類も豊富だ。夜の食事を基本にすると、もう1品、ついで買いをする確率が高まるので、客単価も高くなるという仕組みだ。

新しい店舗レイアウトでは、雑誌コーナーに惹かれて来店した単身男性客の比率が低下し、女性客の割合が高まることになるかもしれない。ちなみにセブンが試験的に新レイアウトを導入した店舗では、ファストフードの販売が大幅に伸び、店舗の日販(1日あたりの売上高)は7%拡大。利益率は0.4%向上したとされる。

【参考記事】次世代スマート自販機はコンビニの未来をアマゾンと争う

他社は簡単には真似ができない

同社では、今期中に新レイアウトの店舗を新店で1000店、既存店で800店、展開する予定となっており、2021年までには約1万店が新しいレイアウトになる。仮に全店舗(1万9500店舗)が新レイアウトになり、売上高が7%拡大したと仮定すると、筆者の試算では、本体であるセブン&アイ・ホールディングスには600億円の利益がもたらされることになる。あくまで理屈上だが、セブンの株価は15%ほど上昇する余地が出てくる。

これほどの効果があるのなら、競合他社もすぐに真似しそうだが、そうはいかないだろう。店舗の商品構成を変えることは実は簡単ではないのだ。先ほど説明したように、ファストフードは多数の来客が見込める場合に限って高い利益をたたき出すが、来客数が見込めない場合には逆に利益率を下げてしまう。

しかもファストフードは消費期限が短く、商品が売れ残ってしまえばすべて廃棄しなければならず、場合によっては収益の足を引っ張りかねない。

つまり、ファストフードの大幅な拡充は諸刃の剣であり、もともと販売力の高いセブンだからこそ決断できるという側面がある。サークルKサンクスと経営統合した新生ファミリーマートは、LINEと提携を発表するなど、あらたな集客手法を模索しているが、その最大の理由は来店者を増やすことにある。来店者が増えれば、利益率の高い商品をたくさん販売できるからである。

こうした視点で各社を眺めて見ると、相対的に来客数が少なく、店舗の収益力もそれほど高くないローソンはかなりの苦戦を強いられるかもしれない。

【参考記事】小売店を打ちのめしたアマゾン 今なぜ実店舗に手を出すの?
【参考記事】日本でコストコが成功し、カルフールが失敗した理由

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ学校近くで空爆、死者10人超 パレスチナ人避難

ビジネス

スペースXがIPOの詳細説明、6月上旬にロードショ

ビジネス

NZ航空、5・6月の減便と運賃引き上げ発表 イラン

ワールド

ロシア産原油の輸入、ウクライナ平和・日本の国益に何
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐせ・ワースト1
  • 3
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙の2大テーマでAI懸念を払拭できるか
  • 4
    地面にくねくねと伸びる「奇妙な筋」の正体は? 飛行…
  • 5
    トランプ、イランに合意期限「米東部時間6日午前10時…
  • 6
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 9
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 10
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 3
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始めた限界
  • 4
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 7
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 8
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 9
    「高市しぐさ」の問題は「媚び」だけか?...異形の「…
  • 10
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 6
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story