コラム

中国発の世界同時不況になる可能性は低い

2015年09月15日(火)16時20分

 世界経済の中で、もっとも豊かで、大量に製品を購入しているのは米国であり、最終的には米国の消費が世界経済の行方を決定することになる。

 この事実は数字を見れば明らかである。米国は日本に対しても、中国に対しても、そして欧州に対しても輸入が輸出を上回っている。つまり世界経済における最終的な需要地は米国なのである。特に中国に対しては、米国は年間4600億ドルを輸入する一方、輸出は1300億ドルにどとまっている。

 日本は年間約1300億ドルを中国に輸出しているが、輸出した製品を使って組み立てられた最終製品を購入しているのは中国ではない。中国に輸出した製品は、最終製品という形で米国に再輸出されており、日本が製造した部品は、結局は米国が購入しているのだ。

 つまり、世界経済の動向を決定しているのは中国経済ではなく、米国の消費ということになる。米国は先進国の中で人口が増え続けている数少ない国である。米国がリーマンショックからすぐに立ち直ることができたのも、人口の増加によって堅調な消費が続いたことの影響が大きい。

 今年に入ってガソリン価格が大幅に下落したことで、消費には追い風が吹いている。米国の堅調な消費が継続する限りは、世界経済全体が大きく失速する可能性は低いと考えた方が自然である。逆にいうと、この部分が崩れてしまうと、中国がどのような状況であれ世界経済は低迷することになる。

 もちろん中国経済失速の影響がまったくないわけではない。中国の建設ラッシュが一段落してしまったことで、資源国から中国への輸出は大幅に減少しており、この影響で資源国の経済は大打撃となっている。米国が利上げに踏み切れば、新興国からさらに資金が流出し、市場が混乱する可能性は否定できないだろう。

 また資源価格が下落することで、先進国のエネルギー産業も影響を受ける可能性がある。だが、これらの話は中国と資源国、あるいは先進国における特定セクターの話であり、経済の最終的な需要の話とは直接関係しない。

 世界経済の動向を分析する際には、この事実をしっかりと頭に入れておく必要があるだろう。わたしたちが注目すべきなのは、中国の生産動向ではなく、米国の個人消費の動向である。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、エジプトに穀物・エネハブ創設提案 制裁

ワールド

米軍のイラン攻撃は「戦争犯罪」の可能性=米専門家

ワールド

ロシア、ドローン部隊に大学生勧誘 高い給与など提示

ワールド

ホルムズ海峡の商船保護決議案、安保理で採決へ 中国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 4
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トラン…
  • 5
    血圧やコレステロール値より重要?死亡リスクを予測…
  • 6
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 7
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 8
    満を持して行われたトランプの演説は「期待外れ」...…
  • 9
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 10
    「一般市民に敵意なし」...イラン大統領が米国民宛て…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 6
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 7
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story