コラム

人民元切り下げから考える、注目すべき中国経済統計の話

2015年08月21日(金)10時54分

 最近の輸出動向を見てみると、2014年は平均すると5%台の伸びを示していたが、徐々に減速が目立つようになり、2015年の3月には前年同期比マイナス15%、4月にはマイナス6.4%を記録した。2015年に入って輸出が低迷し、これが企業活動を停滞させ、設備投資の縮小につながった可能性が考えられる。上記の3項目で言えば、輸出の低迷が投資を縮小させるという流れである。

 中国は途上国なので、GDPに占める個人消費の割合は約5割にとどまっている(日本は約6割、米国は約7割)。一方、設備投資や公共投資の割合は相対的に高い。つまり中国の経済は産業依存型であり、輸出の低迷が企業活動全体に与える影響は日米よりも大きいと考えられる。

プロの投資家も参考にする統計値

 では、足元の企業活動は、実際、どのような状況なのだろうか。プロの投資家は、中国経済について分析する際、電力消費量をよく参考にする。電力消費量は、企業の活動状況を如実に反映するだけでなく、中国においては、他の統計に比べて信頼性が高いことで知られているからだ。

 国内の総電量消費量は2014年前半までは前年同期比5%台の伸びだったが、2014年後半から伸び率が鈍化し、2015年に入ってからは横ばいに近い状態が続いている。中国経済は、製造業からサービス業への転換が進んでいるため、エネルギー効率が向上している。したがって電力消費量の伸びがそのまま産業動向を示すわけではないが、今年に入って成長鈍化が顕著になっているのは確かなようである。

 一連のデータから判断すると、少なくとも今年のGDP成長率については、中国政府が目標としている7%台から大きく下振れしていると考えた方が自然である。

 もっとも、中国の輸出が不振で設備投資が減少しているからといって、それが個人消費にまで悪影響を及ぼすとは限らない。中国は巨大な人口を抱えており、内需の絶対値が大きく、消費活動は簡単に冷え込まないからである。

 そうなってくると、景気回復のカギを握るのは、やはり輸出ということになり、それ故に、中国当局は通貨切り下げを強行したものと考えられる。中国にとって最大の輸出先は米国であり、中国の輸出回復は米国の購買力にかかっている。中国経済が軟着陸できるのかは、結局のところ、利上げ後の米国次第ということなのかもしれない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネスなどの分野で執筆活動を行うほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。『お金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)、『スタグフレーション』(祥伝社新書)、『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来』 (幻冬舎新書)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン戦争は2週目に、トランプ氏「無条件降伏」求め

ビジネス

アングル:欧州で若者向け住宅購入の新ビジネス、価格

ワールド

焦点:道半ばの中国「社会保険改革」、企業にも個人に

ワールド

昨年の関税合意実施を米と確認、日本が不利にならない
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 2
    中国はイランを見捨てた? イランの「同盟国」だったはずの中国が、不気味なまでに静かな理由
  • 3
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示さない
  • 4
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    「みんな一斉に手を挙げて...」中国の航空会社のフラ…
  • 7
    10歳少女がライオンに激しく襲われる...中国の動物園…
  • 8
    【WBC】侍ジャパン、大谷翔平人気が引き起こした球場…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 8
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story