コラム

日本が求められている「人権外交」は本当に効果的なのか

2021年04月24日(土)15時12分

日本でも人権外交が叫ばれるが(東京・渋谷の国連大学前) ISSEI KATOーREUTERS

<現地政府に圧力をかけても逆効果になりやすい。G7や国連などの場で態度を表明するのが限度>

香港、ウイグル、タイ、ミャンマー(ビルマ)......。2000年代の旧ソ連諸国や中近東諸国に代わって、この頃はアジアで人権・民主化問題が目立つ。

そして「日本政府はもっと声を上げて、現地の市民たちを擁護しろ」という声が高まり、これら諸国に投資している日本企業も現地政府と市民運動の間の板挟みになっている。

しかしどの先進国の政府も、他国の人権・民主化問題について介入するのは及び腰だ。自国の企業や国民がその国で不当な扱いを受けるかもしれないし、それまで苦労して築いてきた外交・経済上の地歩を簡単に放棄していいものでもないからだ。

だから「制裁」しても骨は斬らず、実際、企業は制裁をかいくぐってビジネスを進める。「人権問題」は多くの場合、その実態や全容が見えない。運動家や政府双方が誇張した物言いをするからだ。

例えば中国新疆地方の場合、100万人ものウイグル人が強制的な教習施設に入れられているとか、綿花が強制労働で収穫されているとの報道があるが、実態は分からない。

中央アジアでは学童を綿花収穫に動員しており、これはけしからんので輸入するなと言われているが、綿花は農民にとって貴重な収入源になるものだ。

一時は香港が民主化運動で麻痺したが、これは本土からの資金と人口の流入で家賃や物価が高騰し、圧迫された香港の青年たちが抗議に立ち上がった面もあり、アメリカなどの西側企業はビジネスを続けている。香港の青年で自立能力のある人たちは日本に引き取ればいいと思うが、日本にもそれほど職場はない。

難民として引き取るのも難しい。ずっと以前、外務省で「ベトナムのボート難民」問題を担当したが、日本語で自活できない人たちが家族ぐるみで何年も住める施設も、その生活を支える予算も人員もない。それにボート難民のほとんどはアメリカ行きを希望していて、日本に定住する気はなかった。

その後日本は難民条約にも加入して受け入れ体制はましになったが、それでも難民として認定されたのはこれまでで1万5000人にも満たない。外国人労働者の受け入れは日本も意外に実績があり、新型コロナウイルスの流行以前には留学生も含めて250万人弱が日本に滞在していた。これは自活している人たちで、日本経済にとっても大いに助けになっている。

プロフィール

河東哲夫

(かわとう・あきお)外交アナリスト。
外交官としてロシア公使、ウズベキスタン大使などを歴任。メールマガジン『文明の万華鏡』を主宰。著書に『米・中・ロシア 虚像に怯えるな』など  <筆者の過去記事一覧はこちら

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