韓国「変則的な大統領制」の欠陥がもたらす奇妙な選挙制度
尹政権の発足時は大統領府と国会で「ねじれ」が生じるが問題はそれだけではない(写真は韓国国会) Jeon Heon-Kyun/Pool via REUTERS
<大統領と国会議員、そして大法院判事の任期が1年ずつずれる制度が引き起こす問題とは>
大統領制と議院内閣制はどう違うか。そう問われた時、皆さんはどう答えるだろうか。
大統領は国民から直接選ばれるけど、議院内閣制の首相は議会で選ばれる、そこが違う。そう答える人が多いだろう。もちろん、それは我々が中学から大学まで、繰り返し学んできた事であり、間違いではない。
しかし、本当に重要なのは、ここからだ。単に制度の違いを知っていても、その働きがどうかわからなければ、その知識はあまり役に立たない。問題は、制度の違いが結果として各国の政治にどの様な違いをもたらすか、である。
さて、今回の韓国大統領選挙後の韓国の状況は、「大統領制とは何か」「我々が慣れ親しむ議院内閣制とどう違うか」にはじまる、制度の違いが持つ重要性を垣間見せてくれる教科書的な事例となっている。
周知の様に議院内閣制では首相を選ぶのは議会だから、多くの場合、首相の所属党派、つまり与党は自然と議会の多数派になる。だからこそ首相は自信をもって自らの望む法案や予算案を議会に提出し、リーダーシップを発揮することができる。
だが、大統領選挙と議会選挙が別個に行われる大統領制の下ではこの原理は働かず、時に「分断政府」と呼ばれる大統領の所属党派と議会の多数派が異なる状況が生まれることになる。
重要なのは、大統領制の下では通常、大統領は議会を解散する権限を持たないので、この状況が次の選挙までそのまま持ち越されることである。アメリカの例で言えば、有名なのはクリントン政権の事例であり、実に1995年から2001年までの6年間、民主党から選ばれた大統領と上下院の双方にて多数を占める共和党が激しく対立することとなっている。
当然の事ながらこの様な状況は大統領のリーダーシップを大きく阻害し、国政を大きく停滞させる。とはいえ、この問題がそれほど深刻にならないのは、多くの国の大統領制においては、大統領選挙と議会選挙、または大統領選挙と議会選挙の一部が、同じタイミングで行われるからである。この場合、大統領選挙における候補者の人気が、その候補者を擁立する党派の支持率を向上させる相乗効果を持つ事になる。
しかし、韓国の場合はそうではない。何故ならこの国が有する大統領制は、その様な本来の形から更に変更を加えられたものになっているからだ。
重要なのは、この国では大統領選挙の日程が国会議員選挙のそれとは全く別個に設定されている事である。背景にはこの国の民主化の歴史がある。
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