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証券とは? 代表的な有価証券と取引するための必要な手続きを紹介
証券とは?
証券とは、財産における権利や義務を証明する書類。具体的には、株や債券などが代表的な証券であり金融市場で流通している。株や債券は財産の形態の一つであり、発行元の信頼性から金銭的価値を有しているが、証券という形にすることで金融市場において売買できるようになっている。
証券の種類
証拠証券
証拠証券は、契約に対する権利を証明する証券。代表的な書類には領収書が挙げられる。領収書は、物品を購入したことを証明し、必要があれば返品を要求できる権利があることから、証券の種類の一つである。しかし、証拠証券は株や債券とは異なり、一般的に売買されるものではない。
有価証券
株や債券など財産的価値を持つ証券は一般的に有価証券のことを指す。有価証券は証券会社を通して売買が可能である。保有することで配当や分配金が貰えるなどの権利を有する。
また、証券という名称であるが形態は必ずしも書面ではない。現在の株式は、2009年に紙に印刷された書類をすべて無効としたことで、証券保管振替機構(ほふり)と証券会社の口座で電子的に管理する仕組みを取っている。
有価証券を取引できる証券会社の仕組み
証券会社は、金融市場において買手と売手を仲介する役割を果たしている。投資家が証券会社に有価証券の購入を注文すると、証券会社は証券取引所に注文を伝える。また、証券会社自身も有価証券の売買に参加することで取引が成立しやすくなる。証券会社は仲介による手数料と、有価証券の売買による収益を得る業務形態を取っている。
同じ有価証券を買いたい投資家と売りたい投資家。新しく株式を売り出したい企業と新規に上場する株式を購入したい投資家など、様々な取引を仲介していることから、証券会社では円滑に有価証券を売買することが可能である。
総合証券とネット証券の違い
証券会社は大きな範囲で区分すると、総合証券とネット証券の2種類がある。
総合証券
総合証券は、対面証券とも呼ばれ実店舗を有しており、営業担当者と対面でやり取りをして証券を取引できる証券会社。具体的には、野村證券、大和証券が例に挙げられる。投資について相談しやすく情報提供を受けられる点から、サポートが手厚い点でネット証券より優れている。反面、手数料の高さから利用率が減少傾向にある。
ネット証券
ネット証券は、投資のすべてがインターネットで完結する証券会社。SBI証券、楽天証券、マネックス証券が代表的な例となっている。ネット証券は総合証券と比較して手数料が安く、低コストで証券を取引できる点で優れている。若年層ほど利用率が高く、現在ではネット証券が証券会社の主流である。一方で、サポートの手厚さは総合証券と比較すると劣る。
有価証券を取引できる代表的な証券会社の種類
SBI証券
SBI証券は、SBIグループのネット証券会社であり、国内でもトップクラスのシェアを誇る。取り扱う有価証券が幅広く、株式・債券・投資信託を広く取り扱っている。ネット証券におけるオリコン顧客満足度も1位を獲得しており、日本を代表する証券会社である。三井住友銀行の委託金融商品取引業者でもあり、特定の銀行に連携するサービスにも強みを持つ。
楽天証券
楽天証券は、楽天市場などのインターネット関連サービスを展開する楽天グループのネット証券会社。楽天経済圏と呼ばれる日常生活に必要なサービスを幅広く楽天グループに統一することで楽天ポイントの還元などの恩恵を受けられることから根強い人気がある。楽天証券も例外なく有価証券の購入で楽天ポイントの利用・獲得が可能である。
マネックス証券
マネックス証券は、マネックスグループの証券会社である。SBI証券、楽天証券に次いでシェアが大きいネット証券であり、米国株・中国株・海外ETFなど海外の有価証券の取り扱いに強みを持つ。同社調べでは、新規に口座開設を行った人の半数以上が投資経験者であり、投資に対する知識を有する顧客からの支持も厚い。
野村證券
野村證券は、国内最大級の総合証券。1918年設立の大阪野村銀行を基盤に債券取引を通じて経営拡大を行った歴史ある証券会社である。オンラインと対面の2つの取引を選択可能であり、オンライン取引の場合は手数料が低く設定されている。総合証券でありながら、ネット証券の側面を持ち、大手証券であることからサポート体制が充実しているため、総合力の高さが魅力だ。
大和証券
大和証券は、1943年に藤本証券と日本信託銀行の合併によって設立された大手証券会社。古くから実績を重ねてきた大和証券は外国株の取り扱いにおいて、他の証券会社と比較しても非常に幅広く、他の証券会社で取引できない外国株を取引できる可能性も高い。投資情報や無料ツールも充実しており、大手証券の情報収集能力の恩恵を享受できる。
有価証券を取引するための必要な手続き
証券会社に口座開設を申し込む
一般的に有価証券を取引するなら、証券会社に口座開設を申し込む。有価証券の種類によっては、銀行、保険会社、信用金庫、郵便局でも購入できるが、広く有価証券を取引するなら証券会社に口座開設することを推奨する。
証券会社の口座開設には、本人確認書類とマイナンバーが確認できる書類が必要。ネット証券に申し込む場合は不要であることが多いが、印鑑を必要とする場合もある。
有価証券の購入に必要な資金を入金する
口座開設をした後には、証券会社に有価証券の購入に必要な資金の入金が必要。口座開設時に金融機関の口座情報を入力することで、利用している金融機関の口座から証券会社の口座に入金が可能である。
入金した資金はネット証券であれば即時に反映されるサービスもある。金融機関の口座以外には銀行振込などで入金する方法もあり、入金方法によって手数料の有無が異なる場合もあることから、手軽かつ手数料が無料である入金方法を選択したい。
取引したい有価証券を選び売買する
証券会社に入金が反映されている状態になれば、取引したい有価証券を自由に選んで買い注文ができるようになる。購入した有価証券は、任意のタイミングで売り注文が可能。有価証券が上場しているなら、金融市場が開いている時間帯であればリアルタイムで売買が可能だ。
日本株を売買できる東京証券取引所は9:00~11:30、12:30~15:00に開かれている。海外の有価証券を購入したい場合は、米国株であれば日本時間で23:30~6:00(サマータイム:22:30~5:00)にリアルタイムで取引可能。購入する有価証券によっては、取引に適した時間帯があることを留意しておきたい。
代表的な有価証券の種類
株式
株式は企業が資金を集めるために発行する有価証券である。企業の価値に基づいて株価は上下し、購入した株式の価格に応じて損益が発生する。株式は金融市場で売買ができるだけでなく、保有を続けることで権利が得られる。株式ごとに設定されている権利確定日に株式を保有している人を対象に、保有株式数に応じた配当や優待の獲得や、議決権の行使が可能になる。
債券
債券は国や企業が発行する借用書の役割を果たす有価証券。発行元は債券を保有する投資家に対して、元本の返済と利息を支払う義務を背負う。投資家は定期的な利息収入が得られ、債券が満期を迎えると発行元が全額を返済することから元本が確保された投資が可能。ただし、発行元が破綻するなどして債務不履行に陥ると元本が返還されない場合もある。
投資信託
投資信託は投資家から集めた資金をまとめて運用し、その利益を分配する有価証券。投資信託に投資すると、投資額に応じて売買によって損益が発生する。損益は投資信託の運用状況によって決定する。保有するだけで、分配金という形で収益の分配を受けられる商品もある。証券会社の手数料とは別に信託報酬と呼ばれる専門家に運用を代行してもらう手数料がかかることも特徴である。
有価証券を取引する口座の種類
一般口座
一般口座は、有価証券の売買で発生する損益を、利用者自身で計算して確定申告する必要がある口座。有価証券で見込める利益が所得控除の範囲を超えないことが予測されるため、納税や確定申告が不要となる場合に選択される。
特定口座(源泉徴収なし)
特定口座は、証券会社が有価証券の損益を計算し、税額を算出して年間取引報告書を作成する。年間取引報告書から税額を把握できるため、自身で確定申告して税金を納める場合に選択される。
特定口座(源泉徴収あり)
特定口座では、証券会社が税額を計算して年間取引報告書を作成するだけでなく、有価証券で利益が発生した際に税金を差し引いて納税手続きを委託することも可能。源泉徴収ありの特定口座で有価証券を取引する場合は、原則として確定申告は不要である。
特定の制度で開設できる特別な口座
NISA口座やiDeCo口座など、特定の制度で利用される特別な口座で取引された有価証券は、発生した利益が非課税となる。ただし、上記の3つの口座とは異なり、自身で証券会社に申し込みを行って口座開設を依頼する必要がある。
有価証券の取引に役立つ制度
NISA
NISAは、株式・投資信託の取引で得られた有価証券の利益を非課税にする個人投資家のための税制優遇制度。成長投資枠とつみたて投資枠の2種類の投資枠があり、合計で1,800万円(成長投資枠は1,200万円までの制限がある)までの購入金額の有価証券を非課税で運用できる。
成長投資枠では株式・投資信託、つみたて投資枠では金融庁で指定された投資信託のみを運用可能。2024年から現行制度への移行とともに非課税期間の制限が撤廃され、無期限で運用できるようになった。
NISAは証券会社に特別な口座であるNISA口座の開設を申し込むことで開設できる。ただし、証券会社の口座開設は複数開設できるが、NISA口座を開設できるのは1つの証券会社のみとなっているため、慎重に開設する証券会社を決める必要がある。
iDeCo
iDeCoは、有価証券を運用して作る私的年金制度。毎月拠出する掛金を利用して、投資信託を購入し積立投資を行う。投資信託の利益にかかる税金は非課税となる。原則として加入してから60歳~65歳まで掛金の拠出が可能であり、原則として60歳まで資産を引き出せない。
有価証券の購入に利用できる非課税制度では、老後の資産形成を目的にした制度であり、他の目的でこの制度を利用することは難しいが、掛金の支払いや年金の給付時にも税制優遇が受けられるため、老後の資産形成におけるメリットが大きい。
iDeCoの口座も開設できるのは一人一つであり、開設する証券会社を慎重に選ぶ必要がある。加えて、iDeCoで購入できる投資信託が証券会社によって異なるため、購入できる投資信託の種類を把握しておきたい。
証券の相続に関する基礎知識
被相続人が保有している証券について
被相続人が保有している株や投資信託などの有価証券はすべて相続財産となる。株の場合、相続税の基準額は、相続発生日の最終価格であるが、相続が発生した月とその前々月までであれば、1ヵ月の終値の平均額を最終価格として申告することが認められている。最終価格は、証券会社に残高証明書を発行してもらうことで証明する。
相続人が証券を相続する方法
相続人が証券を相続するには、証券会社の口座を開設して移管する必要がある。口座は被相続人と同じ証券会社であることが望ましいが、違う証券会社でも移管に対応している場合がある。移管された後は売却して換金できる。
相続人が複数いる場合の遺産分割について
遺産分割の方法は、売却して換金した後に分割する方法と、株であれば株数を基準に有価証券のまま分割する方法がある。
被相続人の有価証券の保有状況がわからない場合
被相続人の有価証券の保有状況がわからない時、どの証券会社で口座を保有していたかをわかっていれば、証券会社に問い合わせることで確認可能。株を持っている以外に情報がない場合は証券保管振替機構に問い合わせると、被相続人がどの証券会社に口座を保有しているのか知ることができる。
証券に関するQ&A
Q1:証券と株の違いは?
株は、証券の中でも有価証券に該当する金融商品。よって、株は証券の種類の一つであり、証券は株を含めて幅広い財産における権利や義務を証明するものを内包する言葉である。
Q2:証券と証券会社の関係を簡単にわかりやすく説明して欲しい
株や債券などの証券は、国や企業がお金を集めるために発行する。しかし、証券を買いたい、売りたいと思ってもつなぐサービスがなければ、誰が証券を欲しがっていて、売りたがっているのかわからない。
そこで証券会社が間に入って、証券を買いたい人と売りたい人を繋ぐ。証券が欲しい人に行き渡り、手放したい人はお金に換えられる仕組みを証券会社は作っている。
Q3:証券と證券の違いは?
證券は証券の旧字体。基本的に現在の証券会社に使用されることはないが、野村證券をはじめとする歴史ある証券会社では旧字体の證券を使用し続けている場合がある。
Q4:証券会社と銀行の違いは?
証券会社は、資金調達を目的に発行された株や債券などの証券を投資したい投資家に仲介することが主な役割である。銀行は企業・個人から預かった資金を、融資を希望する相手に貸し与える仕組みで成り立っている。銀行も投資信託などの有価証券や資産運用のサービスを取り扱うこともあり、サービスが重なる点はあるものの、主だった目的が異なっている。
Q5:証券会社はどのような方法で収益を得ている?
証券会社は、有価証券の取引で発生する仲介手数料の他に、証券会社自身で有価証券を売買するトレーディング収益、信用取引などの利息等による金融収益がある。この中でも仲介手数料は日本の証券会社において収益の大きな割合を占めていたが、大手証券を中心に収益が分散化している。
有価証券の手数料を中心に収益構造が成り立っていると考えると、近年のネット証券において手数料の無料化が進んでいる背景に疑問を持つかもしれない。しかし、大手ネット証券では手数料に依存しないビジネスモデルを形成しており、収益が分散しているため無理なく手数料の無料化を実現できる。
Q6:証券会社が潰れると有価証券はどうなる?
証券会社が潰れると株・債券・投資信託などの有価証券は、分別管理の対象となっているため、すべての有価証券が返還される。ただし、貸株として証券会社に貸し出していた株など、例外的に返還されない有価証券も存在するため注意が必要である。
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