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REIT(リート)とは? 3つのメリット・デメリットと効果的な節税方法を解説

2024年01月31日(水)16時57分
REIT(リート)とは?

REIT(リート)とは?

REIT(リート)とは、不動産投資法人が投資家から資金を集め、不動産への投資を行い、得られた賃貸収入や売買差益を投資家に分配する不動産投資信託とも呼ばれる金融商品。投資家はREITが投資対象とする不動産の間接的なオーナーとなり、実際の運用を不動産投資法人に委託し、その収益の分配が受けられる。

REITは「Real Estate Investment Trust」の頭文字を取った略称であり、その仕組みは米国で誕生した。そのため、日本で生まれたREITは区別してJ-REITと呼ばれることがある。

REIT(リート)と他の投資方法との違い

不動産投資との違い

不動産投資は、実際に物件を購入して自身で運用する必要があるため、始めるには物件の購入に加えて運用する手間もかかる。REITは金融商品であることから、物件の購入を必要としない。加えて、実際の運用は不動産投資法人が行う。不動産投資に対する知識がない人でも不動産に投資しやすい金融商品である。

投信信託(REITファンド)との違い

REITは投資信託の種類の一つであり、株式に投資する投資信託が株式型投資信託、債券に投資する投資信託が債券型投資信託と呼ばれるように投資対象による分類である。ただし、REITは普通の投資信託とは異なり、東京証券取引所に上場している。

株式・債券などに投資し上場する投資信託はETF(上場投資信託)と呼ばれるが、J-REITはすべて上場していることからこの区別を持たない。ただし、複数のREITを投資対象とする投資信託であるREITファンドもあり、こちらはJ-REITだけでなく海外REITへの投資ができる金融商品であり、必ずしも上場しているわけではない。

REIT(リート)のメリット

不動産に少額から投資できる

REITは、1口単位で購入することから、投資口価格が最低投資金額となり、REITによって最低投資金額は異なるが、10万円あれば投資できるREITも多い。不動産投資は物件の購入価格が投資額となるが、不動産投資ローンを組んで返済するとしても、少額から投資することは難しい。REITは不動産投資と比較して少額から不動産に投資できるメリットがある。

安定した利回りが期待できる

REITは不動産への投資によって得られた賃貸収入や売買差益を、分配金という形で投資家に還元するため、安定した利回りが期待できる金融商品である。J-REITの平均分配金利回りは4%程度であり、高い利回りを維持できる理由は、J-REITは収益の90%超を分配するなどの一定の条件を満たせば法人税がかからないことが挙げられる。株式と比較すると安定して高い利回りの維持が期待できる金融商品である。

株式市場で売買できるため流動性が高い

REITは、東京証券取引所に上場しており、株式市場で売買できる。物件として形がある不動産を売却しようとすると、買い手を見つけるまでの時間を要することから時間がかかりやすい。REITは東京証券取引所が開いている9時00分~11時30分、12時30分~15時00分の時間であれば、リアルタイムで売買して現金化が可能だ。不動産を投資対象としているが流動性は高く、売却しやすい独自の特徴を持っている。

REIT(リート)のデメリット

不動産と同様の災害リスクを負う

REITは不動産を投資対象としていることから、不動産投資と同様のリスクを負う。日本の不動産を投資対象とする場合は、火災、地震などの災害リスクが大きい。REITの投資先の不動産が災害の被害に遭うと、REIT価格の下落による元本割れや、分配金利回りが低下する可能性もある。

投資法人が破綻するリスクがある

REIT特有のリスクには、不動産に投資する投資法人の破綻がある。投資法人が破綻したREITは上場廃止となり、上場廃止となったREITの価格は大きく下落し、買い手が見つからないことから流動性が低下することが予想される。投資法人の運営状況が悪化は、最終的にREITの上場廃止を招く危険性がある。

配当控除が受けられない

REITは株式の配当と同様に20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税金が課税される。国内株式であれば配当を総合課税として申告した場合、配当控除により税金の控除が受けられるが、REITの分配金には配当控除が適用されない。

株式の配当は法人税を差し引いた後に、源泉徴収して分配される仕組みであることから、二重課税にあたる。二重課税にあたる部分を確定申告で調整することが配当控除の意味である。REITでは分配金に法人税がかからないことから、二重課税の問題が生じないため、配当控除が受けられない仕組みとなっている。

REIT(リート)の節税方法

REITは配当控除が適用されず、不動産投資と比較しても節税に利用できる制度が少ない。REITの効果的な節税方法は、個人投資家向けの税制優遇制度であるNISAを利用して購入することが挙げられる。

NISAの成長投資枠はREITも対象であり、2024年からNISAの非課税投資期間が無期限になったことから、一度購入すれば売却するまで非課税で分配金を受け取れるため、長期投資であるほど節税効果が高くなる。

REIT(リート)の主な投資対象の種類

REITには主に7つの投資対象がある。それぞれの投資対象に特化した単一用途特化型REITもあるため、特徴を理解することで、REITのリスクとリターンを把握しやすい。

住宅(マンション)

REITでは主にマンション投資が主流となる。一般的な不動産投資と同様に入居者から家賃収入を得ることで収益を上げる。一室あたりの賃料の低いことから、入居者を一定数保ち続けられている物件への投資であれば安定性が高い。

オフィスビル

企業が事業で使用するための物件に投資する。オフィス街など需要の高い地域の物件であれば、賃料の相場が高く入居者を見つけやすいため、利益を生みやすく高い利回りを期待できる。反面、企業の需要に依存しやすく、業績不振やテレワーク拡大によるオフィス縮小などの流れにより、利回りが大きく減少することがある。

商業施設

ショッピングモールなどの商業施設は郊外の場合、長期的に入居するケースが多く、安定性の高い物件として知られている。一方で、都心の場合は賃料形態が売上歩合方式になっていることが多いため、消費の動向によって賃料が変化しやすくハイリスクハイリターンである。

物流施設

貨物の保管・仕分けのための施設であり、インターネットショッピングの普及により必要不可欠な存在となっている。テナントの入れ替えによって収益が落ちる時期がある点に注意が必要であるが、入れ替えの頻度は少ない傾向にあるため収益に安定性がある。

ホテル

宿泊施設であるため観光産業に利益が依存しやすい。景気が良く、インバウンド需要が高まっている状態にあれば高い収益性を期待できる。一方で、景気が悪化し、観光産業の需要が落ち込んでいる状態にある場合はリターンが大きく減少する。

ヘルスケア施設

老人ホームなどの高齢者施設を中心にヘルスケアに関する施設の需要も高齢化社会では高まっている。今後も成長していく分野であることから、将来性の高さを理由に投資する物件となっている。

データセンター

インターネット用のサーバーなどを設置して運用するデータセンターは、社会のデジタル化が進む現在では需要が高まっている。ヘルスケア施設と同様に将来性に期待して投資する物件である。

REIT(リート)の買い方・購入方法

証券会社で口座を開設する

J-REITは株式と同様に証券会社で購入できる。そのため、証券会社の口座を開設していない場合は、口座開設を申し込む必要がある。ネット証券で口座開設を申し込めば、最短で当日から取引を開始できる。

購入したいJ-REITを選ぶ

証券会社で口座を開設するとJ-REITを購入出来るようになる。売買単位は1口からであり、最低投資金額はREITの投資口価格と同様である。証券会社では、チャート・配当利回り・投資対象などの情報を確認してREITを選択できる。

J-REITを購入する

東京証券取引場が開く9時~15時(11時30分~12時30分まで休場)が取引時間となっており、時間外の注文は翌日の取引時間に執行される。また、REITファンドを購入する場合は、上場していないことから、購入して資産に反映されるまでに時間を要する。

REIT(リート)のおすすめの選び方

投資対象からリスクとリターンを分析する

REITの運用成果において重要になるのは、投資対象となる物件の種類である。REITの種類は単一用途特化型の他に、2種類以上の投資対象を組み合わせる複合型と、複数の物件に満遍なく投資する総合型がある。REITが公開している不動産ポートフォリオも参考にして、投資対象から見込めるリターンとリスクを判断することが重要だ。

分配金利回りだけでなく総合的に判断する

REITへの投資において、年間で期待できる収益を決定するのが分配金利回りである。分配金利回りが高いほど収益を見込める投資対象となるが、REIT価格が値下がりするほど元本が目減りするため、分配金利回りの高さのみを理由に選ぶことは推奨できない。投資対象、これまでのチャートも参考に総合的に収益を上げることが期待されるREITを選びたい。

格付などの客観的な情報から信用性を見きわめる

J-REITは不動産投資法人と呼ばれる会社の形態を取っていることから、実際に運用する投資法人の信用性も重要だ。信用性を見きわめるためには、日本格付研究所が公開している格付評価を参考に選びたい。AAA~Dまでで評価されており、AAAに近いほど信用性の高い投資法人であるといえる。不動産投資法人の破綻によって、J-REITで損害を被らないためにも信用性の高さも選ぶ基準に加えたい。

NAV倍率とLTVなどの指標を確認する

NAV倍率は、投資口価格を一口あたりの純資産で割った数値。株式におけるPBRと同様の指標であり、どちらも一般的には1.0倍以下の場合に割安と判断される。LTV(Loan To Value)は借入金比率であり、割合が高いほどリスクが大きいと考えられる。指標が悪いことを理由に必ずしも危険性が高いREITとはいえないが、実際にREITに投資する前に確認しておきたい。

スポンサー企業を把握しておく

J-REITには、不動産投資法人に物件を供給するスポンサー企業が存在する。スポンサー企業の役割は広く、投資法人の経営や人材にも介入するため、J-REITはスポンサー企業の影響を受けやすい。スポンサー企業について調べた上で、無視できない不安材料がある場合は投資を再検討したい。


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