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焦点:米中関係どん底へ、バイデン大統領なら改善するのか

2020年08月01日(土)07時47分

 7月24日、米中関係が急速に悪化する中、中国は11月の米大統領選に向けて一段の波乱を覚悟するとともに、バイデン前副大統領が政権に就けば対立の進化を避けられる可能性があると見込んでいる。北京の人民大会堂で握手するバイデン副大統領(当時)と中国の習近平国家主席。2013年12月撮影(2020年 代表撮影)

Keith Zhai Michael Martina Tony Munroe

[24日 ロイター] - 米中関係が急速に悪化する中、中国は11月の米大統領選に向けて一段の波乱を覚悟するとともに、バイデン前副大統領が政権に就けば対立の進化を避けられる可能性があると見込んでいる。

米国が南部テキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を要求したことで、中国側は激怒し、報復として四川省成都にある米国総領事館の閉鎖に動いた。

中国はいつも通り、トランプ米大統領の直接的批判は避けながらも、国営メディアの論説で、総領事館閉鎖は選挙向けの戦略だと辛らつに評した。

中国政府や軍部内タカ派の間には、トランプ氏が再選されれば中国の地位向上が加速するチャンスだとの見方がある。新型コロナウイルス感染症対応を含め、迷走するトランプ政権をしり目に、多くの中国人は自らの立ち位置に自信を深めている。

ただ中国高官6人と中国政権に近い複数の筋によると、トランプ氏の予見不可能な行動および関税政策への怒りや、多方面から敵意を示してくる姿勢への警戒感と並行して、米中対立激化への懸念が高まっているのも事実だ。

ポンペオ米国務長官が23日に行った演説で、実に27回も「共産主義」国家の中国、および中国共産党を名指しして非難し、中国により断固たる態度を取ることが「われわれの時代の使命」だとまで言い切ったことも、中国政府をいらだたせている。

関係筋らによると、2016年米大統領選でのトランプ氏の勝利で意表を突かれた反省に立ち、中国政府は今回、早くから政府系シンクタンクに大統領選と米世論についての報告書を上げさせている。特に注目しているのは民主党候補者バイデン氏とその政策だ。

ある中国高官は「米中関係が古き良き時代に戻るなどという幻想は抱いていないが、大統領が変われば少なくとも関係を一新するチャンスは生まれる」と語る。「いずれにせよ、関係はこれ以上悪くなりようがない」

<対中強硬姿勢はデフォルト>

米国が中国に強い態度で臨むことは今や、党派を超えたデフォルト(規定)路線だ。「バイデン政権」もこれを踏襲し、特に人権問題では今以上に強硬な姿勢を示すとみられている。

ただ、バイデン氏が大統領に就けば、対話に前向きになる可能性はある。選挙陣営関係者らによると、バイデン氏は米国の競争力、技術革新力、インフラの強化に再投資し、「米国の強さ」を打ち出す立場だからだ。

オバマ前政権とトランプ政権初期に東アジア外交の責任者を務めたダニエル・ラッセル氏は「中国は、バイデン氏が勝てば米国の中国認識が転換するという幻想は抱いていないようだ。しかし新政権に対話を申し出る可能性は高いだろう」と語る。

バイデン、トランプ両陣営はいずれも、中国が応援するのは相手方だと主張している。

トランプ陣営の幹部、ティム・マートー氏は、中国は間違いなくバイデン氏を応援していると指摘。「バイデン氏はワシントンでの47年間、一貫して中国に譲歩し、彼らの利益を押し上げてきた実績がある」とした。

一方、バイデン氏陣営の報道官、アンドリュー・ベーツ氏は、「中国に関し、米国史上最も弱い大統領」であるトランプ氏が政権に就いてから、中国は「やりたい放題」だと語った。

中国の一部高官とアナリストによると、中国は今後数カ月間、米国との緊張を制御し、必要な時だけ報復するという基本姿勢で臨む構えだ。

米国が最近、中国の南シナ海での権益主張を違法と言明したのに対し、中国側が比較的落ち着いた対応を取ったことなどに、この「我慢」アプローチが反映されている。

ただ中国は、米国で反中感情が高まる大統領選期間中に対話をしても成果は乏しいとみているため、積極的に対話を呼びかけることはなさそうだ。

中国人民大学の時殷弘教授は「中国はトランプ氏の中国批判と対中制裁に憤っている」と指摘。「中国はトランプ氏の政治的地位が国内で揺らぎ、それゆえ彼の価値が落ちたことを察知している」とも述べた。

ロイター
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