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焦点:トルコ・タントラムか、市場は通貨危機の伝染を懸念
8月14日、トルコ通貨リラは過去1週間にわたって最安値を更新し続け、世界の金融市場を揺るがしている。写真はリラ紙幣。イスタンブールで撮影(2018年 ロイター/Murad Sezer)
Ritvik Carvalho and Karin Strohecker
[ロンドン 14日 ロイター] - トルコ通貨リラ
トルコリラの下落と「危機の伝染(コンテージョン)」が他の資産クラスに及ぼす影響を以下にまとめた。本格的なコンテージョンの兆候が出現したのは、2013年に米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和縮小を示唆して新興国が動揺した、いわゆる「テーパー・タントラム(緩和縮小に対するかんしゃく玉破裂の意味)」以降で初めてだ。
1)リラ下落の副産物
今月初めからの資産運用の変化には、トルコ情勢の影響が見られる。
MSCI新興国株指数<.MSCIEF>は年初来9.9%下げており、MSCI世界株価指数<.MIWO00000PUS>の進む方向と乖離(かいり)し続けている。また、これは新興国の中央銀行がいっせいに金融引き締めを行っている時期とも重なった。
トルコ通貨危機による世界市場に対する影響の大きさや持続性を巡っては、専門家の間でも意見が分かれている。
「対ロシア制裁や米国とトルコの関係は特異なリスクであり、これらに限っていえば、大きなコンテージョンはみていない」とピクテ・アセット・マネジメントのスティーブ・ドンズ氏は言う。「新興市場全体でコンテージョンが起きるには、包括的にドルが強くなくてはならない」
2)新興株
リラ急落はトルコの株式市場を動揺させた。ドル建てでは、MSCIのトルコ株式インデックス<.MITR00000PTR>が8月初めから約24%下落。年初来では50%超下げている。一方、より幅広いMSCI新興国株指数<.MSCIEF>は約10%の下落だ。
3)他の新興国通貨に波及
トルコリラの急落は、他の新興国通貨の下落も招いている。アルゼンチンの通貨ペソは最安値を更新。新たな緊急利上げも歯止めにはならなかった。インドのルピーも最安値まで落ち込んだ。ロシアのルーブル、南アフリカのランド、インドネシアのルピアも2年超の安値となった。
トルコと類似性のある市場だけが売り手の標的ではないと、英投資会社エキゾティックス・キャピタルのスチュアート・カルバーハウス氏は指摘する。
「コンテージョンとリスクオフが主なテーマだ。ただし、『似たような特徴』だからというより、全般的に売られている」
多くの国では、経常赤字の拡大により、リスク資産を減らそうとする投資家に対する脆弱(ぜいじゃく)性が一段と高まっている。「こうした基準で見ると、トルコ、アルゼンチン、パキスタンがもっともダメージを受けやすい」とカルバーハウス氏は付け加えた。
新興国通貨安の連鎖はまた、過去1カ月においてこれらの通貨に対する予想変動率の急上昇をもたらした。これは、さらに大きな動きが数日内に起きると投資家が予想していることを示している。
4)ユーロとユーロ圏の銀行
欧州の銀行株、とくにトルコでかなり手広く活動しエクスポージャーが高い銀行の株式は、欧州中央銀行(ECB)が一部銀行について懸念を強めていると伝えられると売られた。
「スペインの銀行は、深刻化する通貨危機に対してもっとも弱い。次に弱いのはフランスとイタリアの銀行だ」と、英コンサルタント会社TSロンバードのシュエタ・シン氏は指摘。「欧州の銀行が抱えるトルコに対するエクスポージャーの高さを考えると、危機が進行するにつれ、その影響に対する投資家の懸念も強まる」
欧州の銀行に対する圧力は、通貨ユーロへの圧力へと波及している。ユーロ圏の金融システムの安定性を巡る懸念が再燃する中、ユーロはすでに弱含んでいた。
5)安全資産
投資家がリスク資産を手放し、世界でもっとも安全と思われている米国債へと向かう中、米ドルもリスクオフの流れの恩恵を受けている。米10年債利回りは過去2週間で最低水準となり、ドルは1年ぶりの高値を記録した。
安全資産とみなされている日本円やスイスフランといった通貨も、トルコ・ショックから買われた。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)