ニュース速報

ワールド

焦点:大統領選控えたトルコ、苦難にあえぐ金融市場の実態

2018年06月23日(土)08時34分

 6月21日、トルコで24日に実施される大統領・議会選では、エルドアン大統領が再選され、憲法改正に基づき権限も強化される見通しだ。写真は19日、トルコのマルディンに貼られる同大統領のポスター(2018年 ロイター/Goran Tomasevic)

[ロンドン 21日 ロイター] - トルコで24日に実施される大統領・議会選では、エルドアン大統領が再選され、憲法改正に基づき権限も強化される見通しだ。

債務拡大やエルドアン大統領の金融政策への介入が嫌気されてトルコ資産は今年大幅下落し、大統領は外国人投機筋への批判を繰り返している。

最近の相場下落と、外国人投資家のトルコ投資に関する情報を以下にまとめた。

●リラ

リラは今年、一時年初来25%も下落し、5月末に中央銀行が計500ベーシスポイント(bp)の利上げを実施した後にようやく落ち着いた。もっとも、エルドアン大統領は利下げを求めており、大統領選で勝利すれば金融政策への支配を強めると表明している。

新興国市場通貨の中でリラの取引高は屈指の大きさで、ロシアルーブルや南アフリカランドを超えることも多い。トレーダーによると今年は出来高が急増した。

●株式市場

時価総額1600億ドルのトルコ株式市場は今年、大荒れとなっている。主要株価指数<.xu100>は第2・四半期に急落し、現在はリラベースで年初来20%安。優良株の指数<.xu030>はドルベースで年初来35%安と、ロイターがカバーしている主要新興国株式指数の中で最悪だ。

世界銀行によると外国人投資家の上場株保有比率は64%前後。国際金融協会(IIF)のデータでは、外国人投資家は4カ月連続で売り越している。

外国人の保有比率は10年前に比べれば8%ポイントほど縮小しているが、それでも南アフリカ(2016年末時点で40%未満)などの新興国に比べて大幅に高い。

●債券市場

他の主な新興国と異なり、トルコの自国通貨建て債券市場は国内プレーヤーに支配されており、国債発行残高5750億リラ(1210億ドル)に対して外国人の保有比率は20%強にとどまっている。

ロシアのOFZ債はこの比率が3分の1程度、南アは40%強だ。

しかし、リラの下落阻止を狙った2度の緊急利上げにもかかわらず、トルコ国債の実質利回り(インフレ勘案後)は比較的低い。

また、他の主要新興国に比べればトルコ政府の債務の対国内総生産(GDP)比率は比較的小さいが、投資家はトルコ企業の外貨建て債務に懸念を募らせている。

リラ安の影響で、トルコ3大銀行の借り入れ金利は過去最高水準に跳ね上がった。マッキンゼーによると、トルコの企業債務の対GDP比率(ドルベース)は途上国で最高の部類に入り、2007年以来、平均して年率28%のペースで膨らみ続けている。

●外国直接投資および海外からの融資

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、外国からトルコへの直接投資(FDI)は、2015年の約180億ドルをピークとして17年には110億ドル前後に減っている。16年7月のクーデター未遂以来の減り方が大きい。

07─15年の西アジア地域に対するFDI総額において、トルコは25%超を占めている。

民間セクターの外貨建て債務は推計2000億ドル。リラ急落で返済額が膨らみ、企業は融資借り換えを試みている。

国際決済銀行(BIS)のデータによると、トルコの銀行のドル建て債務は565億ドルなのに対し、リラ建て債務は21億ドルにとどまっている。

(Karin Strohecker記者 Tommy Wilkes記者)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ政権の貿易政策、経済への影響判断は時期尚早

ワールド

イスラエル、ハマスに最後通告 「人質返還なければ停

ビジネス

MSCI銘柄入れ替え、日本株は東京メトロ1銘柄を新

ワールド

再送オープンAI「売り物でない」、マスク氏の買収提
MAGAZINE
特集:ガザ所有
特集:ガザ所有
2025年2月18日号(2/12発売)

和平実現のためトランプがぶち上げた驚愕の「リゾート化」計画が現実に?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観察方法や特徴を紹介
  • 3
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップルは激怒
  • 4
    世界のパートナーはアメリカから中国に?...USAID凍…
  • 5
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 6
    0.39秒が明暗を分けた...アルペンスキーW杯で五輪メ…
  • 7
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 8
    便秘が「大腸がんリスク」であるとは、実は証明され…
  • 9
    フェイク動画でUSAIDを攻撃...Xで拡散される「ロシア…
  • 10
    極めて珍しい「黒いオオカミ」をカメラが捉える...ポ…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 4
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 5
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 6
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ド…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 9
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 10
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中