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混戦の仏大統領選、決選投票での対決シナリオ

2017年04月20日(木)13時53分

 4月19日、フランス大統領選の第1回投票が23日に行われる。世論調査では、中道系独立候補のマクロン前経済相が最有力とみられているが、極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首、急進左派のメランション氏、中道・右派のフィヨン元首相との差は僅差。写真は候補者のポスター。パリで撮影(2017年 ロイター/Christian Hartmann)

[パリ 19日 ロイター] - フランス大統領選の第1回投票が23日に行われる。世論調査では、中道系独立候補のマクロン前経済相が最有力とみられているが、極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首、急進左派のメランション氏、中道・右派のフィヨン元首相との差は僅差で、かつてない混戦模様となっている。

大統領選では、第1回投票の上位2位の候補が5月7日の決選投票に進む。第1回投票のシナリオをまとめた。

<マクロン氏VSルペン氏>

2月初旬以降、世論調査で最も確率が高いと予想されているのが、このシナリオだ。

シナリオ通りの結果となれば、フランス政界に地殻変動が起き、既成政党が衰退していることが浮き彫りとなる。

マクロン氏は1年前に自身の政党を立ち上げたばかり。ルペン氏は欧州連合(EU)離脱を望んでいる。

ルペン氏が決選投票に進むシナリオは、フランス国内では既定路線となっているが、海外の投資家が動揺する可能性がある。

世論調査によると、この2人が決選投票に進んだ場合、マクロン氏が圧勝する見通し。

マクロン氏は親EU派で39歳。ルペン氏は48歳。決選投票で勝てば、フランス初の女性大統領となる。

マクロン氏が勝利した場合、6月の議会選で過半数議席を確保できるのか、という疑問が浮上するだろう。

ルペン氏が勝利すれば、大きな衝撃が走るとみられるが、やはり6月の議会選の結果が、その後の政策運営を大きく左右することになる。

<フィヨン氏VSルペン氏>

このシナリオは、1月下旬まで最も可能性が高いとみられていたが、その後、フィヨン氏の夫人が議員秘書として給与を不正に受け取っていたとされる疑惑が浮上。現在、世論調査のフィヨン氏支持率は3位、もしくは4位に低下している。

フィヨン氏は63歳。その後、支持率はやや盛り返している。世論調査機関によると、疑惑を受けてフィヨン氏を敬遠していた保守系の有権者が、マクロン氏の決選投票進出を阻止するため、土壇場でフィヨン氏に投票する可能性がある。

フィヨン氏は、ルペン氏との支持率の差が最も小さく、この2人が決選投票に進んだ場合、第1のシナリオよりも市場の警戒感が強まる可能性がある。

フィヨン氏は疑惑を否定しているが、大統領に就任した場合も、この問題を引きずり、政策運営の不透明感が強まる可能性が高い。同氏が提唱する大幅な歳出削減には、すでに賛否両論が渦巻いている。

ただ、フィヨン氏には共和党という政党組織の後ろ盾があるため、マクロン氏やルペン氏に比べれば、相対的にスムーズに議会で過半数をとれる可能性がある。

<マクロン氏VSフィヨン氏>

ルペン氏が決選投票に進めなければ、世論調査の長期的な傾向と大きく異なる予想外の展開となる。第1回投票でメランション氏も敗退した場合、2人の反EU候補が姿を消すことになり、市場に安心感が広がる可能性が高い。

マクロン氏とフィヨン氏が決選投票に進んだ場合、世論調査では、マクロン氏が圧勝するとの結果が出ている。

ルペン氏が第1回投票で敗退した場合、FN内で従来の戦略を見直す動きが広がるはずだ。専門家によると、党内では、ルペン氏と同氏の姪であるマリオン・マレシャル・ルペン氏の関係に緊張が生じているが、ルペン党首が依然強い求心力を保っている。6月の議会選でFNがどこまで支持を確保できるかが重要なポイントになる。

<メランション氏VSルペン氏>

金融市場が最も動揺するのがこのシナリオだろう。両候補はともにポピュリスト(大衆主義者)、反EU派。極左と極右という組み合わせだ。

メランション氏は3月下旬━4月上旬のテレビ討論会で頭角を現し、支持率が急伸。この予想外の躍進で、混戦に拍車がかかっている。

メランション氏が決選投票に進むと予測する世論調査機関は、これまでのところないが、メランション氏は世論調査の「誤差」に挑んでいるといえそうだ。

世論調査によると、メランション氏とルペン氏が決選投票に進んだ場合、メランション氏が勝利する見通し。

メランション氏は65歳。ルペン氏と同様、EUの全面的な見直しやEUからの離脱を訴えている。また、ルペン氏同様、議会で過半数を確保して公約を実現するのは、難しいとみられている。

<メランション氏VSマクロン氏>

世論調査によると、この場合は、マクロン氏が決選投票で圧勝する。両候補が描くフランスの未来や対欧州関係は、著しく異なっている。

<メランション氏VSフィヨン氏>

このシナリオは、これまで挙げたシナリオ中、最も可能性が低い。メランション氏とフィヨン氏は、現在、世論調査で3位と4位につけているためだ。

3週間前には全くありえないと思われていたシナリオだが、もし両候補が決選投票に進んだ場合、世論調査では、メランション氏が勝利するとの予測が出ている。

ただ、実際の決選投票で有権者がどのような行動に出るかは未知数だ。メランション氏は、元トロツキー主義者。

<その他のシナリオ>

社会党候補のアモン前教育相は、支持率が8%まで低下しており、決選投票進出を予想する世論調査機関はない。

その他にも、トロツキー主義者2人、非主流派の民族主義者3人、中道系議員1人が立候補している。

極めて可能性の低いシナリオとして、第1回投票で得票率が50%を超え、決選投票なしに大統領が決まる可能性もある。だが、世論調査では、どの候補の得票率も、25%に達しないと予想されている。

*見出しと体裁を修正します。

ロイター
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