ニュース速報

ワールド

焦点:米最高裁判事指名のゴーサッチ氏、政府の法権限に懐疑的

2017年02月01日(水)20時34分

 1月31日、トランプ米大統領は、昨年2月から空席となっていた米連邦最高裁判事に、コロラド州の第10巡回控訴裁判事、ニール・ゴーサッチ氏(写真左)を指名した。ホワイトハウスで撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

[ニューヨーク 31日 ロイター] - トランプ米大統領は、昨年2月から空席となっていた米連邦最高裁判事に、コロラド州の第10巡回控訴裁判事、ニール・ゴーサッチ氏を指名した。同氏は、制定法の解釈において政府機関に与えられる権限について問題を提起しており、同氏が承認されればトランプ氏が推し進める規制緩和にも影響が出るかもしれない。

ゴーサッチ氏は、最高裁のシェブロン判決(Chevron v. Natural Resources Defense Council)に対して懐疑的な見方を示している。最高裁は1984年のこの判決で、政府機関の制定法の解釈が妥当である限り、裁判所はその解釈に従うべきだとしている。これにより、曖昧と受け取れる解釈であったとしても、裁判官は政府機関の解釈に従う傾向が強まったと指摘されることがある。

移民規制に関する事例でゴーサッチ氏は昨年8月、この法理には、誰もが問題と認識しているが目を背けているとし、憲法を公正に扱うことを若干難しくするような形で連邦政府に権限を集中させていると指摘。問題に取り組む時期かもしれないと主張した。

ゴーサッチ氏が最高裁判事に加わることでこの問題の議論が進み、シェブロン判決に懐疑的な見方が広がれば、連邦規制について最高裁で争う企業は、環境問題や移民など様々な問題で優位に立てる可能性が高まるかもしれない。

同時に、政府機関の制定法の解釈にどの程度従うかという点で疑問が高まれば、長期的にトランプ政権に影響が及ぶ。

トランプ大統領は、環境問題や医療保険制度改革などの分野でオバマ大統領が取り組んだ政策を覆すため、政府機関のトップに新たな人材を起用し、組織改革を急いでいる。

ノートルダム・ロー・スクールのジョン・ネーグル教授は「政府権限の縮小をもたらすかもしれない人物を最高裁判事に選んだのが、他の誰でもなくトランプ氏であったということは、まさに皮肉だ」と語った。

同氏は、最高裁がシェブロン判決の判例を覆したり、その効力を制限したりすれば、法律の根本的な解釈決定で下級裁判所は今以上に積極的に関与し、政府側の主張が通る可能性は低くなる、と指摘する。

ケースウエスタンリザーブ大学のジョナサン・アドラー教授は、トランプ政権にとり、一部の規制措置を連邦裁判所で擁護することは難しくなるかもしれない、との見方を示した。

実は、問題を提起したのは、ゴーサッチ氏が初めてではない。最高裁は2015年、環境保護庁(EPA)の空気清浄化に関する規制計画を却下する決定をした。当時、保守派のトーマス判事は、現在の政府の立場は、政府機関の連邦制定法の解釈に従うという行為の合憲性について深刻な問題を提起する、との見解を示した。

政府規制に異議を唱える企業を代表する保守派弁護士のアンドリュー・グロスマン氏はゴーサッチ氏について、ここ数年、様々な議論を巻き起こし見解が分かれている政府権限という根本的な問題について、最高裁をひとつにまとめるかもしれない、との見方を示した。

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

26年世界石油需要は日量143万バレル増、伸び継続

ビジネス

NY連銀総裁「金融政策はデータ次第」、政府巡る不確

ワールド

イスラエルとハマス、ガザ停戦で合意 第1段階は人質

ビジネス

ブラックロック第4四半期、運用資産が過去最高 株高
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    ド派手な激突シーンが話題に...ロシアの偵察ドローンを「撃墜」し、ウクライナに貢献した「まさかの生物」とは?
  • 4
    韓国の与党も野党も「法の支配」と民主主義を軽視し…
  • 5
    【随時更新】韓国ユン大統領を拘束 高位公職者犯罪…
  • 6
    中国自動車、ガソリン車は大幅減なのにEV販売は4割増…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    ロス山火事で崩壊の危機、どうなるアメリカの火災保険
  • 9
    「日本は中国より悪」──米クリフス、同業とUSスチ…
  • 10
    TikTokに代わりアメリカで1位に躍り出たアプリ「レ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 5
    ロシア兵を「射殺」...相次ぐ北朝鮮兵の誤射 退却も…
  • 6
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「…
  • 7
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 8
    トランプさん、グリーンランドは地図ほど大きくない…
  • 9
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 10
    古代エジプト人の愛した「媚薬」の正体
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中