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アングル:米株投資家が注目する出遅れセクター、景気後退関係なく戻りに期待

7月7日、 米株式市場は第2・四半期の企業決算発表シーズンに突入した。ニューヨーク証券取引所で同日撮影(2023年 ロイター/Brendan McDermid)
[ニューヨーク 7日 ロイター] - 米株式市場は第2・四半期の企業決算発表シーズンに突入した。そうした中で、足元では売り込まれているものの、米経済が景気後退(リセッション)に陥るかどうかに関係なく戻りが期待できそうな幾つかのセクターに投資家の注目が集まっている。
S&P総合500種は、一握りの超大型成長株やハイテク株に引っ張られて年初来の上昇率が15%近くに達した半面、ヘルスケアは4.7%、金融は2%、エネルギーは9%近く下落するなど、出遅れたセクターも見受けられる。
こうしたセクターの魅力が今、米国にリセッションが到来する可能性を巡って意見が割れている投資家にとってじわじわと高まりつつある。
BofAグローバルによると、世界のファンドマネジャーは6月にヘルスケアと銀行への資金配分を引き上げた半面、リセッションに際して人気となってきた現金や生活必需品向けの配分は圧縮した。
ブラックロックやウェルズ・ファーゴなどは最近公表した年内の株式市場見通しで、ヘルスケアこそが好ましいセクターだと強調している。
LPLファイナンシャルのチーフ・グローバル・ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は、市場ではリセッションの確率予想が上がったり下がったりしている状況だと指摘。その上で「ただわれわれは各企業から人員削減の話を聞くまでは、さえない決算シーズンにはならず、出遅れセクターの一部銘柄はより有利な立場になると考えている」と述べた。
リフィニティブのデータに基づく第2・四半期のS&P総合500種企業の利益は前年同期比5.7%減と見込まれている。
そうした厳しい図式があるものの、「割安」なバリュエーションと安定した収益によってヘルスケアは、年後半に経済全体が減速したとしても投資の魅力が増大する、とウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニア・グローバル市場ストラテジスト、サミア・サマナ氏は力説する。
ヘルスケアの株価収益率(PER)は17.6倍と、S&P総合500種全体の20.1倍よりもずっと低い。
<ヘルスケアと金融>
ミラマー・キャピタルのポートフォリオマネジャー、マックス・ワッサーマン氏は、新型コロナウイルスのパンデミック期間に滞っていた通常医療の需要が戻ってきたことが、医療機器や診断サービスの分野に依然として追い風となっていると分析。年初来で3%近く値下がりしているアボット・ラボラトリーズなどに強気の見方を示した。
ワッサーマン氏は「経済社会活動の再開が続く中で、医療システムに人々が戻っていると確認できるデータをより多く目にすることになる」と話した。
一方金融セクターは、米連邦準備理事会(FRB)の利上げや、今年の地銀危機の最悪局面は過ぎ去ったとの観測がプラスに働き続ける公算が大きい、とオールスプリング・グローバル・インベストメンツのポートフォリオマネジャー、トム・オグナー氏はみている。
オグナー氏が重視しているのは、金融業界の中でも相対的により多くの成長機会を確保できそうな資産運用分野のLPLファイナンシャル・ホールディングスやモルガン・スタンレーなどだ。
また10日の週から第2・四半期決算発表が始まる大手銀行についても「金利がより長い間、より高くなり続けてFRBとインフレの戦いが長引きそうなら、利益が増大して自社株買いの規模は膨らむ以外にない」と期待する。
リセッションになれば、これまでS&P総合500種をけん引してきたハイテクなど超大型株のキャッシュフロー構造が投資家を引きつける非常に大きな要素になるので、今後これらの銘柄から資金が逃げ出すと決まったわけではないとの声も聞かれる。
しかしLPLファイナンシャルのクロスビー氏は、超大型株の上昇が続けばバリュエーションがさらに限界まで高まるので、一部の投資家はヘルスケアと金融に物色先を変えるだろうと主張している。
(David Randall記者)