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大企業製造業の景況感、7四半期ぶり改善 価格転嫁などで=日銀短観

日銀が7月3日発表した6月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス5と、2012年9月以来7四半期ぶりに改善した。都内で2020年5月撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 3日 ロイター] - 日銀が3日に発表した6月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス5と、2021年9月以来7四半期ぶりに改善した。価格転嫁の進展や原材料コスト高の一服などを受け、幅広い業種で景況感が上向いた。DIは22年12月以来の水準となった。一方、非製造業DIはプラス23と5四半期連続で改善した。
大企業・製造業の業況判断DIは、ロイターがまとめた予測中央値(プラス3)を上回った。「生産用機械」や「電気機械」などから海外経済の減速の影響を指摘する声があった一方、「繊維」、「木材・木製品」、「紙・パルプ」、「石油・石炭製品」、「食料品」などで価格転嫁の進展や原材料コスト高の一服がみられた。「自動車」は生産回復が寄与した。
先行き判断DIはプラス9と、小幅な改善を見込む。
大企業・非製造業の業況判断DIは19年6月以来の高水準で、予測中央値(プラス22)も上回った。感染症の影響緩和が寄与し、対面型サービスの幅広い業種で改善した。特に「宿泊・飲食サービス」のDIは36ポイント改善し、04年3月の調査開始から最大の改善幅となった。
先行き判断DIはプラス20と、小幅な悪化を見込む。原材料・エネルギー高の持続を懸念する声が聞こえるという。
事業計画の前提となる想定為替レート(全規模・全産業)は23年度通期で1ドル=132.43円と、3月調査の131.72円からやや円安方向にシフトした。
今回の短観の調査期間は5月29日から6月30日。回答基準日は6月13日。
<販売価格の見通し、上昇一服>
23年度の全規模・全産業の設備投資計画は前年度比プラス11.8%となり、過去平均を大きく上回った。
企業の仕入価格判断DI(「上昇」-「下落」)や販売価格判断DIは上昇が一服した。大企業・製造業の仕入価格判断DIはプラス52と前回から8ポイント、販売価格判断DI(同)はプラス34と前回から3ポイント低下した。ともに2期連続の低下。
大企業・非製造業では、仕入価格判断DIが前回のプラス48からプラス44に、販売価格判断DIがプラス29からプラス28に低下した。販売価格DIは3月調査で過去最高となっていたが、12期ぶりに低下した。
日銀の担当者は「過去最高の水準からは低下しているが、これまでの原材料や燃料費の上昇を販売価格に転嫁する動きもある」と指摘。「もうしばらく動向を丁寧に見ていく必要がある」と述べた。
前回は過去最高だった全規模・全産業の販売価格や物価の見通しも、下方修正が目立った。販売価格見通しは1年後、3年後、5年後でいずれも下方修正。物価見通しは1年後、3年後で下方修正、5年後は前年比プラス2.1%で前回と変わらなかった。
一方、人手不足感の強さは継続している。雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)は大企業・製造業でマイナス13で、前回から1ポイント「過剰」方向に振れたが大幅な「不足」超は継続。
大企業・非製造業ではマイナス34で、前回を1ポイント下回り1992年3月調査以来のマイナス幅が続いている。人手不足を反映し、24年度の新卒採用計画は全規模・全産業合計で前年度比14.5%増となった。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは今回の短観について「日本経済は『平時』に戻ってきた印象。良くも悪くも、業況判断DIは方向感を欠いた動きになっていくだろう。物価見通しの上昇傾向も収まってきたように、物価動向も安定化するだろう」と指摘。「今回の結果は、粘り強く緩和状況を維持するという日銀のスタンスを変化させる内容ではなかった」との見方を示した。
(杉山健太郎、和田崇彦 グラフ作成:田中志保 編集:石田仁志)