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5月ロイター企業調査:少子化で需要減、業績にはマイナス 国の対策に「期待」14%

5月のロイター企業調査では、企業が日本の少子化に強い危機感を抱いていることがわかった。2015年3月、都内で撮影(2023年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 25日 ロイター] - 5月のロイター企業調査では、企業が日本の少子化に強い危機感を抱いていることがわかった。94%の企業が危機感を覚えるとしており、業績にマイナスと答えた企業も86%に上る。企業として、育児休暇の取得促進などの対応を進めているが、岸田文雄政権の少子化対策に期待できるとの回答は14%にとどまった。政府の少子化対策の財源については、予算配分の見直しや無駄な支出の削減を求める声が多く出ている。
調査期間は5月10日から5月19日。発送社数は493、回答社数は241だった。
<需要減、労働者も不足>
2022年の出生数が推計よりも早く80万人を割り込むなど、国内の少子化が加速している。これについて「大変危機感を覚える」と回答した企業が41%、「危機感を覚える」が53%で、合わせて94%の企業が危機感を示している。少子化が企業業績に与える影響については「大変マイナス」が23%、「マイナス」が63%と、何らかのマイナスを懸念する企業が86%に達した。
人口減は需要減につながるため、幅広い業種から懸念の声が上がっている。「利用者減に直結し、オペレーションも労働集約的な業務が依然多い」(鉄道)、「自動車の内需減少に直結する重大な事態と捉えている」(輸送用機器)などの声があった。需要減のほかにも「社員の高齢化に2024年問題と事業の存続自体に危機感を感じている」(運輸)、「技術者の育成には時間がかかり、少子化による技術者不足は深刻」(建設)と、働き手不足も課題となる。労働者不足は、人材獲得コストの上昇にもつながってくる。複数の企業からは、需要を海外に求め、人材も外国人労働者に頼るしかないとの指摘が出ている。
<少子化対策財源、増税に一定の理解>
岸田政権は「次元の異なる少子化対策」実施に向け検討を進めている。企業調査では「期待できる」が14%にとどまり、「期待できない」との回答はその2倍以上の34%となった。
待ったなしの対策との受け止めが多い中、「子育て支援になっており、出生率増加に対する施策になっていない」(情報サービス)、「少子化の根本原因と言われている若者の未婚化に対して次元の異なる対策が必要ではないか」(電機)と、対策の中身への注文が相次いだ。さらには「少子化対策は経済面のみならず、人生スタイル自体を子供を育ててなんぼの世界観に切り替えて行く必要がある」(機械)と、日本人の考え方自体の変換が必要と指摘する声も複数から出ている。
議論が活発化している財源については「消費税以外の増税」が28%、「消費税引き上げ」が26%と、増税に理解を示す回答が一定の割合を占めた。「国債発行」も18%となる一方、「社会保険の負担増」は14%にとどまった。
こうしたなかで「他の支出を減らして充てるべき。政府は無駄な支出が多い」(電機)、「防衛費の増額など課題は多いが、行政の無駄遣いをチェックして、身を切る改革でねん出すべき」(化学)など、歳出の見直しを求める声が多く上がっている。