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米金融システム、急速な引き締めに適応=FRB金融安定報告書

米連邦準備理事会(FRB)のブレイナード副議長は、今年に入り世界の中央銀行が急速に金融状況を引き締めたものの、米国の家計や銀行、企業はこれまでのところ持ちこたえているという認識を示した。昨年11月、ワシントンで撮影(2022年 ロイター/Kevin Lamarque/File Photo)
[4日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は4日、半期金融安定報告書(FSR)を公表した。ブレイナードFRB副議長は、今年に入り世界の中央銀行が急速に金融状況を引き締めたものの、米国の家計や銀行、企業はこれまでのところ持ちこたえているという認識を示した。
ブレイナード氏は「これまでのところ、家計や企業の負債はおおむね安定しており、金利の上昇にもかかわらず、全体としては家計と企業は負債の返済能力を維持している」と指摘した。
さらに「急速かつ同時の世界的金融政策引き締め」のほか、インフレ急騰や進行中のウクライナでの戦争などのリスクによって、主要金融市場における流動性の逼迫といった「脆弱性の増幅につながる恐れがある」という懸念を改めて示した。
調査対象となった市場関係者や専門家の半数以上が市場の流動性とストレスを「顕著なリスク」として挙げた。これは5月の前回の報告書では触れられていなかった。
このほかウクライナ情勢、インフレ、原油価格への懸念が引き続き強い。また42%か中国と台湾の衝突をリスクに挙げた。
ただ全体として経済はFRBの利上げに適応しているとの判断を示した。銀行は十分な資本を維持しており、株価は下落したが不動産価格はおおむね持ちこたえているとの認識を示した。
「金融を除く企業と家計の債務に起因する脆弱性は、2022年上半期と比べてほとんど変化がなく、穏やかな水準にとどまっている」とした。「企業債務の対国内総生産(GDP)比率は引き続き高水準だ。しかし金利上昇の影響は企業収益の増加によって相殺され、債務返済能力を示すいくつかの指標は改善した」と指摘した。
<国債市場を巡る懸念が再浮上>
国債市場については流動性が悪化していることを指摘しながらも、全体としてはここ数カ月間、円滑に機能していると評価した。
「経済情勢や金融政策の先行きに対する不透明感が高まったことが最近の流動性低下の主な要因なようだ」と分析した。
特にオフザラン(既発債)銘柄と物価連動債(TIPS)で流動性が低水準だったとした上で「しかし市場参加者から価格の提示を受けたり取引を実行したりする上で、大きな問題があるとの報告はない」と説明した。
国債市場を監視するFRB、財務省、ニューヨーク連銀、証券取引委員会(SEC)、商品先物取引委員会(CFTC)から成るワーキンググループが、市場の耐性強化について進捗状況を報告する予定としたが、日程は明らかにしていない。
<海外の混乱が波及するリスク>
ウクライナ戦争、高インフレ、中国の不動産市場の問題と「ゼロコロナ」政策により海外の経済状況が悪化し、特定の状況下で米経済や金融システムへの波及効果が強まる可能性に留意するとした。
「成長見通しの低下とインフレ対策の急激な利上げにより市場のボラティリティーが増大し、ドルはほとんどの通貨に対して大幅に上昇している」との見解を示した。
「長期にわたって金利が低水準で安定していた間に一部の金融機関は借り入れやデリバティブの利用を増やした。その結果、現在金利が急上昇しボラティリティーが高まる中で、金融機関はひずみに直面する恐れがある」と警告した。
報告書は9月に英国で起きた市場の混乱にも言及した。国債利回りが急上昇したことで年金基金が追加担保の差し入れを迫られ、資産を処分した結果利回りがさらに上昇するという事態が生じた。
「この負の相互作用によりイングランド銀行(英中銀)は市場機能を改善するために一時的な債券購入プログラムを導入した」と指摘。「市場が不安定な時期は、一部の金融機関について資金調達圧力が懸念される可能性がある」との見方を示した。
「現代の金融市場は相互につながっているため、海外でのストレスにより米市場に緊張が生じたり米金融機関に問題が起きたりする恐れがある」とした。