ニュース速報

ビジネス

目標2%達成には物価観の変容必要、現行政策の継続が重要=日銀主な意見

2022年01月26日(水)10時49分

1月26日、日銀が17―18日に開いた金融政策決定会合で、2%の物価安定目標の達成には企業や家計の物価観の変容が必要であり、そのために現行の金融政策を粘り強く継続していくことが重要だとの指摘が政策委員から出ていたことが明らかになった。写真は日銀本店の外観、2020年5月撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 26日 ロイター] - 日銀が17―18日に開いた金融政策決定会合で、2%の物価目標の達成には企業や家計の物価観の変容が必要であり、そのために現行の金融政策を粘り強く継続していくことが重要だとの指摘が政策委員から出ていたことが明らかになった。ある委員は、実績値で2%インフレの定着を確認するまで緩和を続けるのが「最も確実だ」と述べた。また、現在の金融緩和を継続することを対外的にしっかり説明するよう求める意見が複数あった。

<丁寧な情報発信求める声>

日銀が26日、決定会合の「主な意見」を発表した。決定会合では「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」が議論され、2022年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しが従来の前年度比プラス0.9%からプラス1.1%に引き上げられた。物価見通しに対するリスクは「おおむね上下にバランスしている」とし、2014年10月から使用してきた「下振れリスクの方が大きい」との表現から修正した。

会合では委員から「4月以降、携帯電話通信料の引き下げ要因が剥落し、それに諸要素が重なれば、消費者物価の前年比は瞬間風速的に2%に近い水準まで上昇する可能性がある」との指摘が出た。

ある委員は「安定的な2%の実現にはなお時間が掛かる状況だ」と指摘。「現行の強力な金融緩和の継続が適当との基本的な考え方に変わりはなく、軸をぶらさず、その方針をしっかりと情報発信していくことが重要だ」と述べた。物価目標を安定的かつ持続的に達成するまで金融緩和を続けるという日銀の政策意図を「誤解がないように対外的によく伝えるべきだ」との意見もみられた。

このほか、金融緩和の継続方針を「日銀が考える望ましい物価上昇のあり方と合わせてしっかりと対外的に説明する必要がある」との指摘もあった。

黒田東彦総裁は18日、決定会合後の記者会見で、コアCPIが23年度にかけて前年比1%程度の上昇率にとどまると予想される中、「現在の金融緩和を修正する必要は全くない」と強調した。

ある委員は「物価目標達成に向けて中長期インフレ予想をアンカーする(定着させる)には、実績値で2%のインフレ定着が確認されるまで緩和を行うのが最も確実だろう」と述べた。

<2%実現へ、鍵は「賃金と中長期インフレ予想」>

会合では、2%目標の実現にはどのような要素が必要か議論が展開された。ある委員は、物価上昇のモメンタムが維持されて2%に近づき、安定的に推移するかは「賃金上昇率と中長期インフレ予想の動向、つまるところ需要の強さによる」と指摘した。

別の委員は「企業による有形・無形資産投資の持続的な増加を通じた資金循環の拡大を伴う持続的な経済成長が必要だ」と述べた。

企業の賃上げについて、ある委員は「需給ギャップが改善し、価格転嫁が可能な状況となれば、政府が賃上げを推進するもとで賃金上昇率が高まっていく」と期待感を示した。

別の委員からは「来年度以降の物価上昇が硬直的とされるサービス価格にも広がっていくのか、さらには賃金や所得の上昇を伴った持続的なものとなっていくのか、物価の基調をしっかりと見極めていくことが重要だ」との指摘も出ていた。

<中国での感染拡大に警戒感>

決定会合は、新型コロナウイルスのオミクロン変異株の感染が国内外で急拡大する中で開催された。委員からは「まん延防止等重点措置の適用地域が増える見込みの中、自主的な行動制限の動きがある程度広がることは避け難く、実質GDP(国内総生産)が感染症拡大前の水準に復する時期はいくぶん後ずれする可能性がある」といった指摘があった。

また、中国の感染拡大と公衆衛生上の措置について「海外需要の下押しと供給制約の悪化を通じて、日本経済に悪影響を及ぼすリスクに注意が必要だ」との声も聞かれた。

(和田崇彦 編集:石田仁志、田中志保)

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB利下げの地合い整う、雇用統計受け 大幅緩和か

ビジネス

米経済は一段と均衡化、利下げの時期到来=NY連銀総

ワールド

プーチン大統領、サウジ皇太子に謝意 米ロの身柄交換

ビジネス

米雇用、8月14.2万人増で予想下回る、失業率は4
MAGAZINE
特集:日本政治が変わる日
特集:日本政治が変わる日
2024年9月10日号(9/ 3発売)

派閥が「溶解」し、候補者乱立の自民党総裁選。日本政治は大きな転換点を迎えている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 2
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻ってきた車の中に「複数の白い塊」...悪夢の光景にネット戦慄
  • 3
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 4
    「冗長で曖昧、意味不明」カマラ・ハリスの初のイン…
  • 5
    「自由に生きたかった」アルミ缶を売り、生計を立て…
  • 6
    世界に400頭だけ...希少なウォンバット、なかでも珍…
  • 7
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 8
    【クイズ】最新の世界大学ランキングで、アジアから…
  • 9
    セブン「買収提案」の意味は重い...日本企業の「バー…
  • 10
    7人に1人が寝つきの悪さに悩む...「夜のエクササイズ…
  • 1
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つの共通点
  • 4
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
  • 5
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 6
    無数のハムスターが飛行機内で「大脱走」...ハムパニ…
  • 7
    死亡リスクが低下する食事「ペスカタリアン」とは?.…
  • 8
    再結成オアシスのリアムが反論!「その態度最悪」「…
  • 9
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 10
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「あの頃の思い出が詰まっている...」懐かしのマクド…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中