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焦点:懸念材料山積みのマツダ、今期下方修正後もコスト拡大の不安
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10月31日、2019年3月期の連結業績予想を引き下げたマツダ<7261.T>。西日本豪雨に伴う販売への影響は一過性だが、為替や中国市場など今期の減益要因は引き続き懸念材料だ。5月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 31日 ロイター] - 2019年3月期の連結業績予想を引き下げたマツダ<7261.T>。西日本豪雨に伴う販売への影響は一過性だが、為替や中国市場など今期の減益要因は引き続き懸念材料だ。今後は「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」への対応に迫られる上、日米通商交渉の行方にも左右され、来期以降もコスト拡大への不安が強まっている。
今期の営業利益は前期比52%減の700億円となる見通し。従来予想から350億円下方修正した。営業利益率は2%にも届かない。
「来期は営業利益率3%レベルへの回復を目指す」――。藤本哲也常務は31日、決算会見でこう述べ、足場固めを確実に行い、22年3月期以降の本格成長に向けて取り組みを推進すると締めくくった。
しばらく成長投資が続くため3%という低水準ではあるが、来期は次世代商品の導入、豪雨の影響からの挽回、変動コストや固定費の徹底的な見直しなどで利益率向上を図るという。
ただ、先行きの懸念材料は多い。会見に同席した古賀亮専務は「売り上げ成長が十分に利益成長につながっていない。とても残念で、次の中期計画では構造的に変えていきたい」と肩を落とす。販売拡大のために、コストはかかっても各国の環境規制への対応や安全技術の装備が不可欠になっているが、価格に転嫁できない競争環境にあるためだ。
古賀専務はまた、11月6日の米中間選挙を控え、「為替の動向が不安定になる」ことや、トランプ大統領が「議会運営で苦しくなると、さらに強硬な考えが今後も出てくるのではないか」と懸念を示した。
中国市場についても、米中貿易摩擦とそれに伴う株式市場の低迷で「消費者心理は冷えている。早期には回復しない」(青山裕大常務)という見立てだ。
中国の4―9月期の販売実績は前年同期比11%減の13万3000台となり、通年での販売計画を従来から2万8000台引き下げて29万4000台とした。
米国販売網の強化に伴う費用も引き続きかさむ。マツダは現在、米国に生産拠点を持っていないが、トヨタ自動車<7203.T>と21年の稼働予定で年産30万台(トヨタ分15万台)の合弁工場を米国に建設している。今後の販売拡大に備えるために、販売網の拡充は欠かせない。
NAFTA(北米自由貿易協定)見直しに伴い、20年から新たに適用されるUSMCAへの対応でもコストが増えるのは必至。関税免除の条件が厳格化され、基幹部品も含めて域内生産の拡大を事実上、迫られているからだ。
トヨタとの合弁工場建設で両社は約16億ドルを投じる計画だが、古賀専務は「労務費や鉄板などの鋼材費は少なくとも上がっていくことを覚悟せねばならない。そして、米国での部品調達は増やさざるを得ない」と述べた。投資負担が拡大することを示唆した形だ。
楽天証券経済研究所の今中能夫チーフアナリストは「事業規模の大きいトヨタなら、かさむコストを2-3年で挽回できるかもしれないが、マツダの規模だと値上げもしにくい。トヨタと提携していることがせめてもの救い。どう協力を仰げるかだ」と話している。
(白木真紀)