ニュース速報
ビジネス
インタビュー:地銀収益悪化、日銀のせいにしても仕方ない=金融庁長官
8月22日、金融庁の遠藤俊英長官は、地方銀行の収益悪化について「日銀が出口を求めて金利を正常化すれば、全てうまくいくとは思わない」と述べた。2013年撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
[東京 22日 ロイター] - 金融庁の遠藤俊英長官は22日、ロイターのインタビューに応じ、地方銀行の収益悪化について「日銀が出口を求めて金利を正常化すれば、全てうまくいくとは思わない」と述べた。日銀の政策変更を待って経営判断を遅らせるのは望ましくなく、地銀は自ら生き残る道を摸索すべきだとの考えを示した。
遠藤長官は、収益が悪化した地銀について、今よりもサービスを向上させることができると判断するならパートナーを見つけ、合併や提携を検討するのも1つの方法だと述べた。
一方で「持ち株会社だけ作って、傘下の銀行は相互不可侵で何のためにやっているのか疑問に思うような銀行もある」とし、統合効果が十分に発揮されていないケースもあると指摘した。
顧客本位の業務運営の確立に向け、金融庁は金融機関が順守すべき原則を作り、金融機関に取り組み方針の策定・公表を求めてきた。遠藤長官は、貯蓄から資産形成という流れがマクロ統計で確認できない現状を踏まえ、今事務年度、これまでの施策が金融機関の顧客にどの程度浸透しているかを検証する方針を示した。
インタビューでの主なやり取りは、以下の通り。
――前身の金融監督庁発足から20年。検査局は廃止され、金融検査マニュアルも廃止予定だ。金融機関のモニタリングのあるべき姿は。
「旧来は、金融機関の個別の健全性に重点を置いた。依然としてこれは重要だが、金融仲介機能の発揮が行われているのか、ということも両立すべき目標だ」
「金融仲介機能が発揮されているかの検証は、検査にはなじまない。金融機関が自分たちの地域における立ち位置をどう思い、自分たちの顧客企業にどこまで入り込んで、コンサルタントやファイナンスをどうしているか。彼らと同じ目線で、同じような問題意識を持ちながら、背中を押していきたい」
「新たに地域生産性向上支援チームを作った。彼らが地域に入って財務局とともに実情を把握し、それらを念頭に銀行と議論する」
「金融庁はいろいろな情報を持っている。他の金融機関の事例なども知っている。銀行がわれわれと議論することで、何らかの有益な情報、有益な刺激が与えられたらと思う」
――地方銀行の収益が悪化している。日銀のマイナス金利政策が、収益悪化の要因ではないか。
「日銀のマイナス金利政策が悪いから、日銀が出口を求めて金利を正常化すれば、全てうまくいくのか。そんなことはない。今の状況の中で、金融機関はどういうビジネスをやっていくか模索しなければいけない。日銀が政策を変更してくれるのを黙して待つという金融機関の経営判断はない。あまり日銀のせいにしても仕方がない」
――生き残りが厳しくなる地銀にどう対応するか。
「最終的には金融機関がどう考えるかだ。合併などが最終的なソリューションだとは全然思っていないが、今よりは良くなるだろうと考えて、合併などを検討するなら検討すればいい」
「統合しなくても、提携で新しいサービスをお互いに融通しながら作っている銀行もある。一方で、レイジーバンク同士で持ち株会社だけ作って、相互不可侵で何のためにやっているんだと疑問に思うような銀行もある。おかしいと思うような合併は、結局のところ経営陣が突き詰めて考えていない。どういう姿を作れば持続可能な金融機関になるのか、真剣に考えていない」
――存立が厳しい銀行は、退場させたらいいのではないか。
「金融は免許業種。普通の株式会社とは違う。金融機能はきちんとないといけない。早期警戒制度の見直しを昨事務年度から掲げているが、できるだけフォーワードルッキングに問題のある金融機関にはフラグを立てて、彼らのビジネスモデルを変えていくとか、将来どうするのか、というのを真剣に議論する制度を作っていく。今事務年度にやっていかないといけない」
――「貯蓄から資産形成」を掲げ、金融庁は施策を打ち出してきたが、個人の投信残高は増えていない。
「われわれは販売側である金融機関が悪いんだと、彼らの問題点を指摘してきた。どういう投信を売っているのか、テーマ別の投信を次から次へ作って回転売買しているのではないか、と疑問を投げかけてきた。さらに顧客本位の業務運営の方針を策定して出してもらおう、KPI(主要業績評価指標)を出して顧客に『見える化』しようという施策を取ってきた」
「しかし、一連の施策がどれだけ効果があるのか、顧客に認知されているか、それによって顧客が金融機関を選別しているのかどうか、一度検証しなければならない。検証しないと、次の有効な施策はなかなか打ち出せない。今事務年度は、顧客本位の業務運営が本当に顧客に届いているのかということについて、何らかの調査を行いたい」
*内容が追加しました。
(布施太郎、和田崇彦 編集:田巻一彦)