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焦点:日銀、「持久戦」で緩和効果拡大狙う 企業行動・海外に不透明感

2017年07月20日(木)20時09分

 7月20日、日銀は金融政策決定会合で、目標とする物価2%の到達時期を先送りする一方、金融政策は現行の緩和策を維持し、好景気を追い風に当面は緩和効果の強まりを待つ姿勢を鮮明にした。写真は日銀の看板、2016年3月撮影(2017年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 20日 ロイター] - 日銀は20日に開いた金融政策決定会合で、目標とする物価2%の到達時期を先送りする一方、金融政策は現行の緩和策を維持し、好景気を追い風に当面は緩和効果の強まりを待つ姿勢を鮮明にした。

長期金利をゼロ%程度に抑制し続けることで、需給ギャップと期待インフレ率の改善を狙うが、企業の賃金・価格設定行動や海外経済など不透明要因も多く、目標達成への道のりは依然として険しい。

「2%に向けたモメンタムはしっかり維持されている」──。物価2%の達成時期を先送りしたにもかかわらず、金融政策を現状維持とした理由について、黒田東彦総裁は会合後の会見で何度も強調した。

「モメンタム」とは総裁の発言を借りれば、「マクロ的な需給ギャップが着実に改善する下で、企業の賃金価格設定スタンスも次第に改善し、中長期的な予想物価上昇率も上昇していく」ことを指す。

実際、需給ギャップは判明している今年1─3月期まで3四半期連続で需要超過となり、プラス幅も拡大方向にある。足元では企業や家計のインフレ期待にも底打ち感が出ており、これらを背景に日銀はモメンタムが維持されていると判断したとみられる。

さらに展望リポートには「企業は、省力化投資の拡大やビジネス・プロセスの見直しにより、賃金コストの上昇を吸収しようとしている」との分析が新たに盛り込まれた。

労働需給の引き締まりが続いているにもかかわらず、物価の足取りが鈍い一因として指摘したものだが、黒田総裁はこうした企業行動が「ずっと続くことはあり得ない」と指摘。「これだけ需給ギャップがプラスになり、有効求人倍率が上がり、失業率が下がる中では、賃金コストの吸収余地も減ってくるので、価格に転嫁することが起こってくる」との見解を示した。

企業のコスト吸収は短期的に物価を抑制するものの、いずれ価格に転嫁され、物価上昇のモメンタムにもプラスに作用するとの見立てだ。

黒田総裁は会見で、こうした環境下で長期金利をゼロ%程度に抑制し続ければ、「実際に物価が上昇するにつれ、実質金利はさらに下がり、緩和効果はさらに強まる」と説明。景気拡大と労働需給の引き締まりの継続という追い風が吹き続ければ、今の政策を維持していても、実質金利の低下で緩和効果が強まり、景気の変動に柔軟に対応できるメカニズムをイールドカーブコントロール(YCC)政策は内包していると説明した。

もっとも、労働コスト吸収の限界による価格転嫁が、いつ、どの程度の広がりで顕在化してくるかは不透明。

黒田総裁が指摘したように「欧米と比べると賃金物価が上がりにくいことを前提とした考え方が、企業や家計に根強く残っている」中では、日銀の想定以上に企業がコスト吸収努力を長期化させる可能性も否定できない。

ある地域金融機関の幹部は「現場を見る限りでは、労働コストを企業努力で吸収する動きが、大きく広がっている実感はない。価格転嫁が進むとすれば、本格的に賃金が上昇するような状況になってからだろう」と指摘する。

また、海外経済は持ち直しの動きが継続しているものの、日銀が展望リポートで最大のリスク要因に指摘したように、米トランプ政権の政策運営や地政学リスクなど海外情勢は引き続き不透明。

日銀では、見通し期間の19年度までを通じて海外経済の回復が外需を支えていくとみているが、市場では米中経済を中心にその持続性に懐疑的な見方も少なくない。

(伊藤純夫 編集:田巻一彦)

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