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焦点:都議選惨敗、年内解散なしの声 試される改造の出来栄え
7月3日、都議選の歴史的な敗北から一夜明け、政府・与党内には結果を「謙虚に受け止める」との言葉が相次いで出た。写真は安倍首相(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 3日 ロイター] - 都議選の歴史的な敗北から一夜明けた3日、政府・与党内には結果を「謙虚に受け止める」との言葉が相次いで出た。ただ、東京都内だけを見ても、衆院選の手足になる都議が57人から23人に激減。年内の解散はできないとの声が広がった。
内閣改造のデメリットを指摘する見方もあり、安倍晋三首相がどのような戦略で体制立て直しを図るのか、最初の試金石は改造人事の時期と出来栄えになりそうだ。
安倍首相は都議選の結果を受け「安倍政権に緩みがあるとの厳しい批判があったのだろう。真摯(しんし)に受け止めなければならない」と記者団に述べた。
政府部内には「地方選と国政は違う。経済優先で進んでいく」(政府高官)と、大敗ショックの鎮静化に努めているが、自民党内の衝撃は大きい。
自民党内では、1)共謀罪審議にみられる強引な政策運営、2)森友・加計問題での安倍首相の説明不足、3)豊田真由子衆院議員の暴言報道、4)下村博文・自民党東京都連会長の加計学園絡みの献金疑惑、5)稲田朋美防衛相のたび重なる失言、6)自民党都議選候補の力不足、7)公明党・創価学会の選挙協力不在──など多様な要因が挙げられている。今回の結果はこれらの「相乗効果」(閣僚周辺)とみられている。
自民党内では、衆院選の際の実働部隊である都議が大量に落選し、直近で衆院選を戦うことは不可能という声が出ている。
あるベテラン議員は、加計問題など安倍首相自身のイメージ悪化の影響もあり、「年内の解散は絶対にできない」と話す。
さらに霞が関OBは「党内に安倍首相では、選挙が難しいという声が広がる可能性もある。麻生(太郎副総理)さん、岸田(文雄外相)ら新しい顔が必要ではないかとの待望論も出てきそうだ」と見ている。
また、解散の時期は、安倍首相の憲法改正戦略とも密接に絡む。年内解散を断念し、2018年12月の任期満了までの間にタイミングを図るとしても、与党内には追い込まれ解散になり、安倍政権にとってマイナスという声もある。
しかし、逆風の中で年内解散に踏み切れば「改憲発議に必要な衆院での3分の2を割り込むのは確実。早期の改憲実施は遠のいてしまう」(自民党議員)というジレンマに安倍首相は直面しかねない。
そこで浮上するのが内閣改造だが、都議選前に取りざたされていた8月上旬の改造には、政府・与党内に異論があるもようだ。
入閣の目玉として打診して断られたり、有力閣僚が改造を機に閣外に出ると言い出して、かえって弱体化を招くリスクがあるからだ。
その一方、改造を先送りした場合、野党が批判してきた閣僚への批判がやまず、安倍内閣のイメージ一新がうまくいかなくなるとの懸念も残る。
<閉会中審査、検討へ>
こうした中、3日午前の自民党役員会後、野党の要求する閉会中審査については「どのような形であれ、応じざるを得ない」(自民党議員)との意見で事実上一致したことを明らかにした。
また、安倍内閣は「政権奪還した時の初心に立ち返る」(安倍首相)とし、経済優先の方針を打ち出した。
ただ、自民党政権の「十八番」である公共投資を中心とした景気対策は、人手不足の深刻化によって、予算を組んだとしても「実効性に問題が出る」(政府関係者)とみられ、景気対策の目玉政策は、今のところ定まっていない。
安倍首相の打ち出す「次の一手」に永田町関係者の注目が集まっている。
(竹本能文 編集:田巻一彦)