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日銀のみで2%達成困難、平時に追加緩和は不要=門間・前日銀理事
9月6日、前日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は、政府の経済対策で日本経済は改善しており、9月の金融政策決定会合において追加緩和の必要はないと述べた。日銀本店の東門、7月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 6日 ロイター] - 前日銀理事でみずほ総合研究所・エグゼクティブエコノミストの門間一夫氏は6日、ロイターのインタビューで、政府の経済対策で日本経済は改善しており、9月の金融政策決定会合において追加緩和の必要はないと述べた。
また、過去3年半の大規模な金融緩和により、日銀単独で2%の物価目標を達成するのは無理であることが証明されたと表明。追加緩和は、急激な市場ショックなどの局面でこそ効果を発揮すると強調した。
門間氏は、前回7月の金融政策決定会合が日銀の「転換点」だったと指摘。ETF(上場投資信託)の買い入れ増額による追加緩和を決めたにもかかわらず、2017年度中の物価目標達成に「不確実性が大きい」と記載した点に着目。黒田日銀が初めて金融政策の限界を示唆したと解釈している。
また、黒田東彦総裁が5日に都内で行った講演に関して「マイナス金利の副作用について、初めて明確に指摘した」とし、人々の物価観を引き上げるためには構造改革により潜在成長率の引き上げが必要であると強調した点に触れ、「日銀のみで2%を実現するのが難しいとの判断を示した」と解説した。
日銀は1)国債などの「量」、2)ETFなどの「質」、3)マイナス金利などの「金利」──の3次元で緩和拡大に限界がないと繰り返してきたが、黒田総裁は5日の講演で、どの政策手段も効果と副作用を比べて判断すると初めて言及したと指摘。その点を高く評価した。
さらに門間氏は「年間80兆円の国債買い入れは持続性に疑念がもたれており、100兆円などへの拡大は無意味」と言明。
企業の設備投資は「金利がボトルネックになっておらず、マイナス金利の深掘りも無意味」と語った。
7月に買い入れを年3兆円から6兆円に増やしたETFも「株式市場をゆがめており、『日本の資本主義はどうなるのか』との声も聞かれる」として、一段の増額には慎重な見解を示した。
日銀による外債買い入れは「為替目的でないと説明するのが難しい」として困難との見方を示した。
また、平坦化しすぎたイールドカーブ(利回り曲線)をスティープ化させるため、特定の年限の金利水準を目標とする可能性については「技術的に難しい」と否定した。
さらに9月会合での量の拡大やマイナス金利の深掘りは、客観的にみてないとの見通しを表明。同時に市場が失望しないよう、質の面で何らかの調整を行う可能性はあると述べた。
門間氏は、5日の黒田総裁講演から日銀の問題意識はにじみ出ていたが、「検証を受けた政策の方向性は全くわからなかった」と指摘。「9人いる政策委員の考え方に非常に幅があるため、合意形成は難しいだろう」との見方を示した。
あくまで個人的な意見として、年間80兆円の国債買い入れを持続可能なものに転換するため「今後多少国債買い入れペースが減少しても、日銀のバランスシートは拡大を続け、緩和が強化されることを分かりやすく説明すべきでないか」と提言した。
門間氏は、黒田日銀の巨額国債買い入れを背景に50%もの円安が進んでも、家計や企業の間で物価が2%に上昇していくとの期待が形成されなかったことを挙げ、日銀単独での2%達成は無理と断言する。
しかし、金融政策に効果が全くないわけでないとも説明した。
日銀は前回7月会合でETFの買い入れ増額による追加緩和を決め、物価が目標の2%到達していない現状を踏まえ、9月会合で総括的な検証を行うと公表した。
(竹本能文、木原麗花 編集:田巻一彦)