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インタビュー:郵便局ネットワークが財産、国内でM&Aも=横山・日本郵便社長

2016年07月06日(水)02時40分

 7月5日、日本郵政グループの日本郵便社長に就任した横山邦男氏は、郵便局ネットワークが最大の財産だとし、国内でのM&Aもあり得るとの考えを示した。写真は郵便局のロゴ。昨年11月撮影。(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 6日 ロイター] - 日本郵政<6178.T>グループの日本郵便社長に就任した横山邦男氏は、ロイターなどとのインタビューで、郵便局ネットワークが最大の財産だとした上で、全国2万4000局の郵便局を維持しながら収益力を高める考えを示した。

国内での基盤強化のために「足らざる分野では買収や提携も今後出てくる。必ずしも海外とは限らない」と述べた。金融面では、地銀の店舗網を補完する提携を進める考えも示した。

横山氏は、6月28日付で就任。三井住友銀行出身で、同行頭取を務めた西川善文氏が日本郵政社長に就いた際、日本郵政に出向し、西川氏の参謀役を務めた。直前まで社長を務めた三井住友アセットマネジメントでは、販売や運用の手数料透明化やネット直販に乗り出すなど抜本的な業務改革を進め、運用業界の改革で先陣を切ってきた。

主なやり取りは以下の通り。

――日本郵便の価値は何か。

「全国津々浦々まで届けられる郵便局ネットワークだ。ここが最大の財産だ。もしかしたら、働いているわれわれが認識してないのかもしれないが、他の企業が郵政と提携したいという時に魅力を感じているのは、このネットワークだ。まだまだ価値あるものにできると思う。ここに魅力を感じて飛び込んできた」

――2万4000局を維持できるのか。

「全国にネットワークがある点が重要であり、ここで信頼という評価をもらっている。ネットワークとして、点と点をつなげて面とすることで収益事業にする。ネットワーク全体として黒字化することを目指したい」

――買収戦略に対する考えは。

「現在の事業をどのように強化していくのかという観点が重要だ。M&Aありきではない。M&Aの打ち上げ花火を上げて、その後どうしようかと苦労している企業も見てきた。足元の事業がどうなのか冷静に分析し、付随する事業の中で何が必要なのかを判断していく」

「大前提として国内で圧倒的な力を持ちたい。グローバルな企業は、どこもマザー・マーケットで大きな力を持っている。国内の足腰を強化するために、国内で足らざる事業のM&Aや提携も今後出てくるだろう。必ずしも海外だけではない。物流でも、それ以外の事業でも買収を考える」

――金融面では、どのような役割を果たすか。

「郵便局における金融の商売は大きい。ここは生かしていきたい。貯蓄から資産形成という流れが出ており、ここを郵便局ネットワークを使って新しいモデルにしていきたい。1700兆円の個人金融資産のうち、預貯金が900兆円だ。このうちの2割、180兆円がわれわれのグループにある。この大きな山を動かすことで、貢献したいと思っている。複雑なデリバティブを使うのではなく、郵便局にふさわしいやさしい商品で、長期の資産形成に資するものを扱う」

――地銀の店舗を補完するような取り組みは。

「積極的にやっていくべき話だ。郵便局ネットワークが評価されると捉えている。提携先として地銀や、あるいは農協もあるかもしれない。郵便局の魅力が増すのであれば、どんどんそういう形の提携を進めていきたい」

――三井住友銀行から郵政に出向していた時期もあった。

「やり残したという気持ちがあったのは事実だ。今まで誰にも言ったことはないが、心の中でもう1回やりたいなという気持ちもあった。お誘いがあり、若干逡巡したが、快くお引き受けした」

「私の信条はスピードと実行力だ。持ち株会社は上場したので、スピード感と経営力を見せていかないといけない。走り過ぎるという欠点はあるかもしれないが、そこは反省しながら進めていきたい」

(布施太郎 編集:田巻一彦)

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