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焦点:円安加速、現実味増すアジア「通貨戦争」
6月10日、円安が加速するなか、韓国からインドネシア、インドまで、アジア各国の金融当局は自国の競争力低下を警戒。写真は東京都内のFX会社、3月撮影(2015年 ロイター/Yuya Shino)
[シンガポール 10日 ロイター] - 円安が加速するなか、韓国からインドネシア、インドまで、アジア各国の金融当局は自国の競争力低下を警戒。自国通貨安に誘導する姿勢をますます強めており、もはや「通貨戦争」の様相を呈している。
インドネシアルピア、マレーシアリンギ、タイバーツを始めとするアジア各国通貨は今年、米ドルに対して徐々に下値を切り下げている。
円が5日、13年ぶりの水準に下落したことを受け、アジア通貨は今週、安値を更新。各国当局は介入に動かず、自国通貨安を放置した。
インド財務相の顧問は同国の輸出が伸び悩んでいることについて、世界的な需要減退だけが原因ではない、と指摘。日本やユーロ圏など、主要国が通貨安につながる緩和政策を実施しているためとの認識を示した。
顧問は「通貨安競争と呼ぶにしろ、通貨戦争と呼ぶにしろ、そうした政策は貿易相手国に影響を及ぼす」と述べ、「われわれは、自国通貨の競争力が低下するのを看過するわけにはいかない」との見方を示した。
年内の米利上げ観測を背景に米ドルが押し上げられ、大半の通貨が下落するなか、インドルピー
2015年に入って、インドネシアルピア
円相場は過去9カ月間で16%下落し、ユーロは2014年5月上旬以来で18%下落しているが、アジア通貨の下落率はこれよりも低いため、国際市場においては、アジア諸国の輸出競争力はそがれている。
アジアのインフレ率は、デフレ傾向にある主要な貿易相手国より高いことから、アジア通貨は理論上、さらに下落するのが妥当と言える。
それにもかかわらず、国際決済銀行(BIS)のデータによると、中国の人民元は4月、貿易・インフレ調整後で見ると2010年比で30%上昇し、韓国ウォンも15%上昇した。一方、円は28%安い。
<アジア通貨危機の再来はない>
現在の状況は、アジア通貨危機が起きた1997年と似ている。当時は、円安と競争上不利な為替相場、経常赤字が危機勃発につながった。
しかしロンバード・ストリート・リサーチのマクロストラテジスト、ガウラブ・サロリヤ氏は「それほどひどいことにはならない」とみている。
同氏によると、インフレ率は当時ほど問題ではないため、アジアが通貨急落に対応する余地は十分にある。また、アジアの中央銀行は当時よりもより多くの外貨準備を保有している。さらに、アジアの市場は柔軟性が向上しており、海外からの投資フローも落ち着いている。
日本や欧州が導入した量的緩和(QE)ほどの大胆な措置ではないものの、アジアの通貨当局は自国通貨安に向けた政策に動いている。
インド中銀は、外貨準備積み増しなどを通じてルピーを抑制。タイは資本流出規制を緩和し、インドネシアはルピア取引の規制を緩和した。
韓国は自動車などの輸出市場で日本と競合することから、円安の打撃が特に大きい。しかし韓国の政府高官は、ロイターに対して、円と同じペースでウォン
アジア通貨は2014年以降、徐々に下落しているが、円の先週の下落をきっかけに、アジア通貨の下落ペースが加速する可能性がある。
ロンバードのサロリヤ氏は「アジアは、競争上非常に不利な為替を背景とした輸出減と、内需の弱さという二重苦に陥っている」と指摘。
同氏は「これは強い逆風だ。アジア各国は、金融緩和や非標準的な措置を通じて、自国通貨安を目指さざるを得ないだろう」と語った。
(Vidya Ranganathan記者 翻訳:吉川彩 編集:田中志保)