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アングル:スイスフラン、円を抑えて安全通貨トップの座に

2015年06月10日(水)18時24分

 6月9日、ギリシャ債務問題への懸念が高まる中、安全通貨として円よりもスイスフランの人気が高まっている。写真はフランとユーロの紙幣、1月撮影(2015年 ロイター/Dado Ruvic)

[ロンドン 9日 ロイター] - ギリシャ債務問題への懸念が高まる中、安全通貨として円よりもスイスフランの人気が高まっている。

スイスは政策金利がマイナス0.75%と、デンマークと並び世界最低だが、消費者物価が前年比で下落しているため投資家はプラスのリターンを何とか得られる。経常収支の黒字も魅力となり、ファンドマネジャーはここ数週間でスイスフランの保有を増やしてきた。

市場が緊張にさらされたり経済の不確実性が高まった時、円とフランは伝統的に安全な投資先と見られてきた。通常は流動性の高い円がフラン以上に人気を集めるが、UBSのデータによると、過去3週間は主要通貨の中でフランが最も買われている。

ノルデアのFXストラテジスト、ニルス・クリステンセン氏は「円とフランを比べると、円が敗れたのは疑いようが無い。主にギリシャ懸念を背景にリスクオフ環境になっているが、円はフランほど反応していない」と話した。

フランは今週、円に対して1月末以来の高値を付けた。スイス国立銀行(中央銀行)は1月15日、突如としてフランの対ユーロ相場の上限を撤廃し、フランの急騰を招いていた。

中銀は資金流入を阻止しようとマイナス金利を導入したが、最近の中銀のデータによると、ポートフォリオ投資とスイス大手投資家による資金の本国送還(リパトリエーション)の勢いは衰えていない。

足元のフラン上昇は、円安と時を同じくしている。投機筋やアセットマネジャー、政府系ファンドなどはここ数週間、日銀がインフレ率を押し上げるために追加緩和を迫られるとの懸念から円を売ってきた。

米連邦準備理事会(FRB)による利上げ予想も反映してドルは過去3カ月、対円で3.5%上昇したが、ドルは対フランでは5%超下落している。

この間、ユーロは対円で6.5%上昇したが、フランに対しては約2.3%下落した。

<フランの一段高見込む>

米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データでは、投機筋は円の下落に賭ける一方、フランについては上昇を見込み続けている。

ある通貨の上昇と下落、どちらを想定したオプションの需要が強いかを示す「リスクリバーサル」は、ユーロのフランに対する下落バイアスを示し続けている。

UBSの通貨ストラテジスト、ジェフリー・ユー氏によると、資産運用会社を主なけん引役とする最近のフラン買いは、ギリシャ問題への懸念と、世界の経済成長が持ち直してデフレリスクを抑えるとの楽観論の後退を反映している。

HSBCの通貨ストラテジー責任者、デービッド・ブルーム氏は現在1ユーロ=1.04フラン前後で推移しているフランが、1ユーロ=1フランの「パリティ」まで上昇する可能性さえあると見る。

ブルーム氏は「ギリシャが債権者団と合意に漕ぎつければユーロ/フランは持続的に上昇する、との見方には疑問がある。事実、オプション市場は『グレクジット(ギリシャのユーロ離脱)』でユーロ/フランが急落するシナリオに対する警戒感の高まりを示している」と述べた。

ブルーム氏は、フランの下落に賭ける市場参加者は、資金の本国送還を着々と進めるスイスの大手投資家と闘うはめになると指摘。「スイスの持続的な経常収支黒字はフラン需要を生み出し続けている。世界経済の見通しがこれほど暗い時にはなおさらだ」と語った。

(Anirban Nag記者)

*見出しを修正しました。

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