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アングル:ドル高への賭けが2年ぶり高水準、年末125円の声も
5月22日、通貨オプション市場ではドルコール・オーバーが一時2年ぶりの水準に拡大、将来のドル上昇を見込んだポジション構築の動きが見え始めている。裁断前の5ドル紙幣、ワシントンの財務省印刷局で3月撮影(2015年 ロイター/Gary Cameron
[東京 22日 ロイター] - こう着しているドル/円
米国の早期利上げ観測がやや後退する中、滞留してきたエネルギーがドル高方向に抜けて行きそうな雰囲気が広がっており、年末までに125円に到達するとの見方も出ている。
<ドル上昇に備える動き>
ロイターのデータによると、ドル/円オプションのリスク・リバーサル(1カ月物25%デルタ)
その後、傾きはやや縮小したが、足元で0.5%近辺と依然ドルコール・オーバーの状態が続いており、ドル上昇に備える参加者が多いことを表している。
リスク・リバーサルは、コール・オプションとプット・オプションの価格を示す予想変動率の差をとって指数化。将来の為替相場の変動に対する市場参加者のリスク認識が、どちらの方向に偏っているかを示す。
みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト、鈴木健吾氏は「足元の材料はないが、将来ドル高方向に動くとみている人が増え始めている」と指摘する。センチメントとして、ドル安警戒感が後退し、短期的にはドル高に備える動きが確認できるとみている。
<投機筋に「余地」>
ファンダメンタルズ上の材料が出てきたわけではない。米経済指標は4月の反転が期待されていたが、雇用統計や小売売上高などは強くなく、後退した米国の利上げ観測を変更させるには至らなかった。
買いの材料が特段見当たらない中でドルは121円台まで上昇してきたが、みずほ証券の鈴木氏は「もみあいが続く中で、押し出されてきたような上がり方。これまで投機筋は円ショートポジションを減らしてきたが、新たにポジションを構築し始めているのかもしれない」と話す。
米商品先物取引委員会(CFTC)が発表したIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組(12日までの週)では、主要6通貨に対する投機筋のドル買い越し額は、9カ月ぶりの低水準。投機筋などが新たなポジションを積み上げる「余地」は大きい。
ドイツ証券・チーフ為替ストラテジスト、田中泰輔氏は「今年前半は米国経済がもたついてこう着状態だったが、7─9月に経済指標がしっかりしてきた時点でドル高/円安をつっかける可能性がある」と指摘。今年末に125円で想定しているという。
<米CPIとFRB議長講演でトレンド出るか>
直近、ドル/円オプションの同リスク・リバーサルが0.7%台まで拡大したのは、13年4月下旬。4月4日に黒田日銀が「バズーカ1」と呼ばれる量的・質的金融緩和(QQE)の枠組みを打ち出し、国債の大量購入方針を明らかにした後だ。当時4月22日に99円前半で推移していたドルは、調整を挟みながら、5月22日に103.74円を付けるまで4円近く上昇した。
きょう22日は、米国の4月消費者物価指数(CPI)とイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長の講演が予定されており、短期的な外為市場のトレンドを左右する可能性があるという。
CPIが市場予想以上ならばドル買い要因、低インフレ傾向が確認されればドル売り要因となりそうだ。イエレン議長が4月以降の経済成長について楽観的な見解を示せば、ドル高を誘発する可能性が高いとみられている。
IG証券のマーケット・アナリスト、石川順一氏は、CPIが強い内容で、イエレン議長が楽観的ならば、ドル/円は「121.50円レベルを突破する可能性がある」との見方を示す。
逆にイエレン議長がドル高や原油安、新興国経済の不透明感などを米経済のリスク要因として言及した場合、「米早期利上げ観測の後退を背景に米金利低下とドル安を促す」とみている。
(杉山健太郎:編集 田巻一彦)