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アングル:トヨタ株の静かな最高値更新、来期不透明で目立つ受動的買い

2015年03月26日(木)15時02分

 3月26日、トヨタ自動車株が盛り上がらない。8年ぶりに上場来高値を更新したものの、出来高はむしろ減少している。1月撮影(2015年 ロイター/Mark Blinch)

[東京 26日 ロイター] - トヨタ自動車<7203.T>株が盛り上がらない。8年ぶりに上場来高値を更新したものの、出来高はむしろ減少している。超低金利を背景にした債券投資の代替や、世界的な株高によるウエート調整を反映した受動的な買いの色彩が濃いためだ。

その証拠に足元では出来高も細っており、日本株の「象徴的存在」である同社株の動きは、今年の市場全体を占ううえでも注目されそうだ。

<世界的な自動車株高>

トヨタの株価は3月に入り25日終値時点までに7.8%上昇。17日に上場来高値を更新し、その後も上値追いの展開が続いている。

だが、3月中の出来高は25日時点で1日平均約872万株。月間の株価上昇率が1.1%にとどまった1月の1日平均約1003万株を大きく下回り、同じく5.4%だった2月の1日平均約896万株と比べても減少。株価が上昇すればするほど商いが細っている。高値を更新し出来高も急増するエーザイ<4523.T>とは対照的だ。

盛り上がりに欠けるのは、トヨタそのものが積極的に評価されて株が買われているわけではないためだとの見方が多い。

トヨタ株を買う目的の1つは債券の代替だ。業績の安定感が随一であるほか、予想配当利回りは2%台とまずまずの水準だ。いちよしアセットマネジメントの秋野充成執行役員運用部長は「世界的な低金利のなか、トヨタ株は債券の代替で買われている典型。米国の利上げで金利が上昇方向にいかなければ、今の債券代替相場からは脱しにくい」と指摘する。

また、世界的な株高が波及している面もある。最高値を更新したとはいえ、トヨタの年初来の上昇率は欧州自動車メーカーと比べ見劣りしている。独フォルクス・ワーゲン(VW)の株価は年初から32.1%、BMWは27.1%上昇。

一方、日系自動車メーカーでは、25日終値時点で日産自動車<7201.T>が21.2%と最も上昇率が高く、ダイハツ工業<7262.T>の16.9%、ホンダ<7267.T>の16.5%、トヨタ自動車<7203.T>の15.0%と続く。「グローバルファンドが自動車セクターのウエートを維持するために、日本の自動車株にも買いを入れている」(国内証券)という。

東海東京調査センター・シニアアナリストの杉浦誠司氏は「(トヨタの)第3・四半期の販売台数は昨年並みにとどまったが、為替メリットなどで一挙に悪くなることはないと市場では解釈されている。昨年末のグループの再編など、トヨタの変化が評価されて買われたという訳ではない」と指摘する。

<東証1部出来高も低迷>

トヨタ株の傾向は相場全体にも当てはまる。日経平均は年初来で13.1%上昇するなど株高局面が続いているが、3月からの東証1部の出来高は1日平均で約21億3000万株。このまま推移すれば、1日平均ベースでは薄商いとなった昨年8月以来の低水準となる。

トラックを含めた国内自動車メーカー10社のうち、年初からの上昇率でTOPIXを上回るのは5社にとどまる。「これ以上の円安進行が見込みにくいとなると、輸出株よりは内需株に目が向かいやすい」(ネット系証券)との見方が多い。

トヨタ株に関しても「為替がもみ合うなかで、自動車メーカーのマージンや数量がどうなるかを市場は見極めている」(コモンズ投信・糸島孝俊運用部長)という。

15年度のトヨタは、新型車の投入や将来への投資再開に踏み切ることなどが期待されている。本決算発表で堅調な来期業績見通しを示すことができるか、トヨタ株だけではなく日本株がさらに上値を追えるかが、重要なポイントになりそうだ。

(長田善行 編集:伊賀大記)

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