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QQEは為替目的ではない、G20方針と整合的=日銀副総裁

2015年03月09日(月)16時32分

 3月9日、中曽日銀副総裁は、日銀が推進している金融緩和は為替を目的にしておらず、G20財務相・中央銀行総裁会議の方針と「完全に整合的」と語った。写真は都内のトレーディングルーム。3日撮影(2015年 ロイター/YUYA SHINO)

[松山市 9日 ロイター] - 中曽宏日銀副総裁は9日、松山市内で記者会見し、日銀が推進している量的・質的金融緩和(QQE)は為替を目的にしておらず、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の方針と「完全に整合的」と語った。

また、大規模な国債買い入れによって、国債市場の機能と流動性が低下するという問題は潜在的にあるとし、注意深く点検していくとの認識を示した。

足元の為替市場では、米国の利上げ観測の高まりなどを受けて1ドル120円を超える円安が進行している。中曽副総裁は、為替相場の動向に関して「水準の評価や動きについて具体的にコメントすることは差し控える」としつつも、一般論として、円安は輸出の増加や世界的に活動している企業の収益改善、外国人観光客の増加などに寄与する一方、輸入コストの上昇などを通じて中小企業や非製造業の収益、家計所得などの押し下げ圧力になると指摘。円安の影響は「経済主体によって異なる」と語った。

その上で「為替相場は経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい」と表明。「G20では各国の中央銀行は物価安定というマンデートに沿って適切な金融政策を運営する、という方針が確認されている」とし、QQEも「2%の物価安定目標を早期に実現するために行っているものであり、為替が目的ではない。G20の方針と完全に整合的だ」と強調した。

<先行き国債買い入れに支障ない、流動性低下など潜在リスク>

QQEの効果については「2%の物価安定目標の実現に向けて所期の効果を発揮しており、順調に道筋をたどっている」と指摘。その上で「今後、何らかのリスク要因で見通しに変化が生じ、物価安定目標の実現に必要になれば調整を行う」としたが、その際の具体的な政策手段については「その時々の状況に応じて目標実現に必要な政策を行うということに尽きる。適切な手段を常に考えていくのがプロフェッショナルとしての責務だ」と語った。

日銀による大規模な国債買い入れによって、金利は歴史的な低水準が続いている。中曽副総裁は「もともとQQEは大量の国債買い入れによってイールドカーブ全体の低下を促すことを企図している」とし、「金利の低下、イールドカーブのフラット化は意図した政策効果があらわれている面もある」と主張。「国債買い入れは方針に沿って着実に進められている」と述べ、「先行きも買い入れに支障を来す事情があるとは考えていない」と政策遂行に問題は生じていないとの認識を示した。

もっとも、大量の買い入れで国債市場の機能や流動性が低下するリスクは「潜在的にある」と指摘。国債市場の動向について「市場関係者との対話も含めて、十分に行いながら今後とも注意深く見ていきたい」との見解を示した。

<景気前向き循環維持され、格差解消へ>

午前の講演では、日本経済がデフレ脱却過程にある中で、「経済情勢改善の成果は大企業と中小企業、都市部と地方などばらつきが大きいのが実情」と格差にも触れた。この点について会見では、金融政策で対処できる領域は限られるとしながらも、日銀がQQEを着実に推進することによって景気の前向きな循環メカニズムが維持され、「格差は徐々に埋まっていくだろう」との考えを示した。

(伊藤純夫)

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