ニュース速報

米FRB、利上げに忍耐強くある姿勢正当化 当局者が相次ぎ見解

2019年03月06日(水)06時15分

[ニューヨーク/サンフランシスコ 5日 ロイター] - 米国で物価上昇が抑制された状態が続く中、連邦準備理事会(FRB)当局者が5日、利上げに対し忍耐強くある姿勢を相次いで表明した。

ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は、FRBが景気リスクが現実のものとなるか判断するには「数回の会合」を要する可能性があると指摘。以前は利上げしなければ景気が過熱するという懸念があったが、今は「さほど差し迫ったものでない」とし、「金融市場の熱が冷め、インフレ圧力の兆候は目先見当たらないことから、いまは経済動向を忍耐強く見守ることが適切な方針で、予想に関するリスクの賢明な管理と言える」と述べた。

今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つローゼングレン総裁は1月、より楽観的な経済予想が現実のものとなるなら、今年2回の利上げが必要となる可能性はなお存在すると発言していた。今回の発言は、総裁の認識が大きく変わったことを示している。

次回FOMCは3月19─20日に開催。その後は、4月、6月、7月に予定されている。この日の発言を踏まえると、ローゼングレン総裁は少なくとも3月と4月のFOMCは政策変更には時期尚早と考えている公算が大きい。

FRBが1月のFOMCで利上げに対し忍耐強くある姿勢を示してから、市場ではいつまでこうした忍耐が続くのか探る動きが続いている。

ダラス地区連銀のカプラン総裁は、米国企業が抱える債務の増大もFRBが利上げに忍耐強く当たる理由の一つとの認識を表明。大幅な債務を抱える企業は下降局面において支出や採用を減らす可能性が高く、「減速が進めば信用の質が一段と悪化する恐れがある」とし、「インフレはFRB(の目標)から乖離しておらず、非常に忍耐強く対応することが賢明であると考える」と語った。忍耐強くある期間については「何週間ではなく、何カ月」になるとの見方を示した。

このほかミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁は、賃金の緩慢な伸びは労働市場の緩みを示しているとした上で、労働市場に依然改善の余地があると指摘。数百万人もの市民が近年、労働市場に再び参入していることに目を見張るとし、「賃金は労働力の逼迫度を測る上で最善の指標であり、個人的に非常に注目している」と述べた。カシュカリ総裁はこれまでの約1年間、利上げに反対してきた。

FRBの政策についてはパウエル議長とクラリダ副議長も前週、忍耐強いアプローチを維持する姿勢を示している。

この日に発表された米経済指標は、2018年12月の新築一戸建て住宅販売戸数が好調だったものの、引き続き強弱が入り交じる内容。ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は、経済が自身の予想通りに展開すれば利上げは正当化されるかとの質問に対し、確約するものではないとしながらも、利上げが「検討事項となる」状況はあり得ると述べた。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易収支3月は5441億円の黒字、財務省「駆け込み

ビジネス

米関税政策は日本経済を下押し、動向注視していく=植

ビジネス

フィッチ、世界成長予想引き下げ コロナ禍除き16年

ワールド

米下院の民主党議員50人弱、DOGEのAIシステム
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 6
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 10
    あまりの近さにネット唖然...ハイイログマを「超至近…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中