ニュース速報

アングル:日米通商交渉、2月開始説が浮上 焦点は米要求項目

2018年12月19日(水)18時12分

[東京 19日 ロイター] - 来年1月中旬にもスタートするとみられていた日米通商交渉の開始時期が決まらない状態となっている。米通商代表部(USTR)が交渉を開始する30日前に開示する予定の対日要求項目を未だに公表していないためだ。日本側では交渉開始は2月にずれ込む可能性もあるとの見方が出ている。米側は対日貿易赤字削減のため、日本の自動車輸出に関税や数量規制を掲げるとの見方もあり、交渉の先行きは予断を許さない。

日米首脳は9月に、通商交渉(物品貿易協定交渉)を開始することで合意。米政府が議会に交渉を通告して90日を経過する1月中旬にも交渉がスタートするとみられていた。

12月10日には米通商代表部(USTR)が公聴会を開き、各種業界団体から要望を聴取した。この後の段取りとしては、米USTRが対日要求項目をホームページ上で開示、30日経過後に交渉が開始する予定。要求項目は19日現在、公表されていない。米国は来週、クリスマス休暇シーズンに入るため日本側の交渉関係者は気をもんでいる。

米国は通商交渉が米経済に与える影響の分析も進めており、「分析結果が公表される1月25日より前に交渉は始まらない」(日米交渉筋)との観測もある。

一方、日本の通常国会は1月28日にも召集される見通しで、開会後数日間は、交渉担当の茂木敏充経済再生担当相が国会を離れることはできず、ライトハイザーUSTR代表が来日しない限り、交渉は2月でないと難しいとの見方もある。

もっとも日本側には交渉を急ぎたいインセンティブは少ない。自動車や農産品で大きな譲歩を迫られる場合、春の統一地方選や夏の参院選に逆風となるためだ。逆に米国側は先の中間選挙で下院で敗退したトランプ政権が2020年の「大統領選再選を目指し交渉成果を急ぐのではないか」(与党関係者や経済官庁幹部)との懸念が聞かれる。

スタートがいつになろうとも、焦点は年間7兆円の貿易赤字を削減したい米側の要求項目となる。うち4兆円を自動車輸出が占めており、「年間174万台の日本から米国への自動車輸出に対して厳しい数量規制を検討する公算が大きい」(日米交渉筋)との指摘もある。

10日の公聴会では、全米自動車労組(UAW)が、日本が安全性や環境基準の厳格化などを通じて「非関税障壁」を設け、市場開放を妨げていると指摘。日本からの自動車・自動車部品輸入に厳しい数量規制を設けるよう要請し、輸入を増やす場合は米国から日本への自動車輸出の伸びに基づいて行うべきとした。米自動車政策評議会(AAPC)は、対日交渉では「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」よりも強力な為替条項が必要と主張している。

USTRの要求項目にこれらの主張がどのように反映されるか注目される。

(竹本能文 編集:石田仁志)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IMF、経済成長予測を大幅に下方修正へ 世界的な景

ビジネス

ECB理事会後のラガルド総裁発言要旨

ビジネス

トランプ氏、FRBに利下げ要求 パウエル議長解任「

ビジネス

金融政策変更の差し迫った必要なし、関税の影響見据え
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 7
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    金沢の「尹奉吉記念館」問題を考える
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中