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コラム
トバイアス・ハリス オブザーヴィング日本政治
亀井静香の暴走を止める方法
先週ニューヨークとピッツバーグで華々しい世界デビューを果たした鳩山由紀夫首相が帰国した。今回の訪米で具体的な成果を挙げたわけではないが、象徴的で有意義な外遊となったことは確かだ。日本の新政権が今後、国際的な問題について積極的に発言していくことを世界に印象づけた。日米関係をはじめとする外交面でも、信頼できる政権だということを示した。
とはいえ新政権は誕生から2週間しかたっておらず、本格的な始動はまだこれからだ。政策決定についても、そのシステム(体系)やプロセスを整理している段階で、実行するまでには至っていない。
■閣僚委員会がカギを握る
そんな鳩山が現在、最も早急に着手しなければならない課題は、亀井静香郵政改革・金融担当大臣(国民新党代表)との関係だ。亀井は鳩山の外遊中に中小企業の借入金の返済を猶予する「モラトリアム法案」の法制化を主張。与党連合内で強い基盤があるわけでもないのに、同法案を制度化できるのは自分だけだと訴えてきた。平野博文内閣官房長官が、亀井の発言は個人的なもので内閣の総意ではないと切り捨てても、亀井の主張は止まらなかった。
亀井は、各大臣には誰にも邪魔されず自由に権限を振るうことができる縄張りが与えられていると考えているようだ。だがこの考え方は、閣僚委員会で政策決定を行っていくという民主党の計画と真正面から対立する。
鳩山はもう「亀井問題」を先延ばしにはできない。亀井のふざけた行動は、自分のポストに満足していないために閣僚としての自分の立場を強めたいという思いからきていると、私は見ている。
鳩山は亀井をコントロールできるはずだ。彼をコントロールするには、やはり閣僚委員会を通すしかない。鳩山は、モラトリアムに反対なら自分を更迭すればよいという亀井の発言を無視し、亀井に藤井裕久財務大臣と直嶋正行経済産業大臣を加えて金融部門の閣僚委員会を開催すべきだ。
鳩山は強調する必要がある。政策とは、メディアを通して勝手に自分の考えを発信した大臣が決めるものではなく、閣僚委員会というシステムを通じて決められるものだと。
■福島を頼りに亀井を孤立させよ
基本政策閣僚委員会についても同じことが言える。これは鳩山と菅直人副総理に、国民新党代表の亀井と社民党党首の福島みずほを加えた党首級の委員会で、28日に初会合が開催される予定だ。この委員会が政府内でどのような役割を果たすのかは不透明なままだが、委員会の発表は他の閣僚に向けた具体的な政策指針ではなく、基本方針に限定されるべきだ。私は菅と民主党が福島を頼りにして、亀井を委員会内で孤立させることを期待する。
閣僚委員会は組織されたばかりだ。新政府はまだ本格的に動き出していない。鳩山政権の働きにパニックをおこすのは早すぎる。今週、政府がなすべきことは政策決定に至るプロセスを固めること。亀井は民主党が政権を握ってからずっと厄介者だったが、影響力は限定的で閣僚委員会が早急に組織されれば困難な立場に追いやられるはずだ。委員会が今度の臨時国会に向けて政府の立法議案をまとめ、亀井の発言は政府見解ではないと繰り返せばよい。
さらにイギリスで議会主導の政治を学んで帰国したばかりの小沢一郎民主党幹事長も、別の角度から亀井に圧力をかけるべきだ。国民新党は参議院で民主党と連携しているため、小沢は国民新党の参議院議員5人に影響力を持つことになるだろう。政府が亀井の意向をくまなくても、参議院で国民新党の支持を得られれば、亀井が鳩山に逆らうことは難しくなる。
いずれにせよ今週が終わるころには、民主党政権の今後がもっとはっきり見えてくるはずだ。
[日本時間2009年09月28日(月)04時02分更新]
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