「電球が全てを変えた...」モロッコ、W杯躍進が象徴する「経済の国」への変貌
準決勝でフランスに敗れたが、ベスト4は歴史的快挙 DYLAN MARTINEZーREUTERS
<ワールドカップにおけるモロッコの躍進は、「経済の国」へと変貌した同国の姿を象徴している>
サッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会におけるモロッコ代表の活躍は、実は電球と少女たちの読書についての物語だ。
今のモロッコが世界トップクラスのサッカーチームを持てるのは、過去20年間の進化の結果だ。この国はポスト植民地時代の伝統的で静的なイスラム社会から、太陽光発電やモダンな高速道路、着実に多様化する経済の国へと変貌した。世界の経済・社会変化・思想とつながる成長中の中産階級もいる。
「電球が全てを変えた。2年前にやっと電気が来たんだ」。モハメド6世が国王に即位して間もなく、私はモロッコの地方のある村人の話を聞いていた。独立から40年もたっているのに、どうして最近になって電気が通ったのかと尋ねると、彼はこう答えた。「モハメド6世だよ。父親の先王はずっとパリにいたが、モハメドは国の発展に全力で取り組んでいる」
確かにそうだ。1999年7月に即位したモハメド6世は貧困を減らし、経済開発と教育、女性の権利向上に力を入れると約束した。その結果、電気の普及率は20年間で70%から100%に、識字率は50%から75%に上昇。女性の識字率も約35%から65%に増加した。
伝統的社会での女性の教育は、長期的な社会の変化と経済発展を促す最大の原動力だ。結婚の最低年齢は18歳に引き上げられ、2004年には女性に「自己保護」と子供の養育権、離婚の権利が与えられた。
1人当たりGDPは00年の1335ドルから3497ドルへと2.6倍に増加(同時期の世界のGDP成長率とほぼ同等だが)。世界最大の太陽光発電施設を建設し、21年には電力の37%を再生可能エネルギーで賄えるようになった。高速道路網は00年以降4倍になり、現在は計画した高速鉄道網1800キロのうち300キロが完成。国土の3分の2をカバーしている。
当然のことながら、教育を受けた中産階級の台頭と同時に、社会的・政治的不満も高まっている。18~29歳の70%が移住を考えているのは、教育の向上と40%を超える都市若年層の失業率、彼らが満足できる仕事を十分に提供できない経済が招いた結果だ。国全体の貧困率は低下しているが、農村部ではまだ都市部の2倍の水準にある。
この問題は経済・社会発展が生み出す典型的な副産物だ。政治とは権力であり、権力者が自ら権力を放棄したり、他者と分け合うことはほとんどない。1789年のフランス革命や1917年のロシア革命の原動力となったのは、教育水準の向上と中産階級の不満の増大だった。モロッコでも、台頭する中産階級が将来への期待を高め、政治的発言権の拡大を要求し、政治体制に緊張をもたらしている。
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